食文化

我が家のおせちの要「黒豆」━受け継ぎたい“いわれ”と、家庭で作る基本のレシピ

年末が近づいてきました。おせちはどうしますか?
SNSでは
「もうおせちは作らない」
「家族が食べなくて残るから、用意しない」
そんな声もよく見ます。

おせちの配置は毎年同じにしています。前年の画像をとっておき、買い出しの計画を立てます。

でも、元々のおせち料理は“つくり置き”の役割。
正月はお店が休み、親戚も集まり、食事の準備を休めるための知恵でした。
今は生活スタイルが変わり、量もいらない。
だからこそ、「少しだけ作る」でも十分。
その一品が、食卓にお正月らしさを残してくれます。

興味を示した高校生たち

私は長く高校の家庭科教員をしてきました。
冬休みの課題として毎年「おせちや雑煮を絵と説明でまとめる」宿題を出していましたが、年々“おせちを全く食べない家庭”が増えました。

それでも――
おせちの“いわれ”の話は、生徒たちの目が輝くのです。
「昆布=よろこんぶ?ダジャレ?」
「きんとん=金運?絶対食べる!」
食べていない子も、“意味”を知ることで興味を持つ。

いわれを知るだけでも、この国の食文化をつなぐ一歩になるのだと感じています。

煮る前のにしんの昆布巻き。かんぴょうの結び目は真結びにします。(縦結びは縁起が悪い、とされます)慶事ごとに今も昆布はでてきます。

まずは「これだけ作ってみよう」から

私自身、おせちは毎年葛藤します。
「面倒」「時間がない」 vs 「でもこれは作りたい」。
数年前に全部を手作りしたとき、「これは続かない…」と悟りました。(笑)

だから今は
・作りたいものを作る
・作れない時は買えるものは買う
・甘さや味の調整は自家製らしく
こんな“ゆるいおせちづくり”にしています。

それでも結果的に作るものが増えるんですが…。

何はなくても三肴(みつざかな)

母はおせちを前に必ず言いました。
何はなくても三肴(みつざかな)
関東:黒豆・数の子・田作り(ごまめ)
関西:黒豆・数の子・たたきごぼう

これさえあれば正月になる”。
そんなおせちの中心となる料理です。
母は作り方も年々工夫していて、
「これは長く煮なくてもいいよ」と教えてくれたのが、今の我が家の方法。
(それでも2〜3時間は煮ますが…笑)
私は黒豆を前夜に準備して翌日に煮るのが定番です。

黒豆のいわれ

・まめに働けるように
・黒=邪気を払う色で、厄除け・無病息災
・長生きの願い(関東では「しわが寄るまで」)
母は西日本出身なので、我が家は しわを寄せない煮方。
煮汁にしっかり浸かるようにします。

黒豆©マイミータス

■チャレンジおせち「黒豆」

副菜、調理時間180分、作りやすい分量

<材料>

黒大豆(乾燥)…180g
□A
 水…4カップ
 重曹…小さじ1/2
 砂糖…150g
 しょうゆ…大さじ2
 塩…小さじ1/2

<作り方>

① Aを煮立てる。
② ①の火をとめまだ熱いうちに軽く水洗いした黒豆を入れ、一晩おく。
③ 翌日、②を火にかけて煮立ったら弱火にし約100mlの水(分量外)を入れて煮る。
④ ③をもう一度繰り返す。(常に豆が汁に隠れている状態にします。足りなければ水を足してください)
⑤ あとは柔らかくなるまでごく弱火で煮る。

<上手に作るポイント>

・スロークッカー等があると便利。スロークッカーを使用する場合は、極弱火(煮ている豆がわずかに揺れる程度の火加減)になるため、3、4の水は不要です。
・ガスだと、安全のために途中で火が消えることがあるので、その際は再度点火してください。
・鍋で煮る場合、豆が常に煮汁に浸っている状態を保つことが大切です。水分が少なくなるようなら水を少し足し、煮ている間は落としぶたとともに、鍋のふたもわずかにずらしてしておきます。

・今年収穫された新豆なら1時間ほどで煮えることもあります。通常は3~5時間。途中で固さを確認してください。煮あがりはねっとり感があります。
・出来上がりから一晩おくと味がなじみます。
・写真は丹波種の2Lサイズの黒豆を使用しています。
・調理時間には、豆を煮汁に浸けおく時間は含みません
制作=管理栄養士・月野和美砂/Ⓒマイミータス

丹波の黒豆=産地ではなく“品種名”

「丹波の黒豆」というと“丹波産”のように思えますが、実は 丹波種という品種の名前です。

丹波黒の表示を撮りました。必ずしもこの表示はあるわけではないです。丹波種の大豆は表面が白っぽいのが特徴。

特徴
・非常に大粒(一般的な黒豆の約2倍)
・生育100日と長い
乾燥にも時間がかかる
収量が少ないため高価
新豆が店頭に出るのは 12月25日前後。
これは生育期間が長いからこそ。

新豆はとにかく柔らかい

黒豆に限らず、豆は時間が経つと皮が硬くなります。
新豆は驚くほど柔らかい。
ですが、古い豆も重曹を少量入れ長めに煮れば問題ありません。
購入時に収穫年がわかると参考になります。

12月9日からは、栗きんとん・松風焼き・ガランティーヌ・伊達巻と続きます
「今年はこれ作ってみようかな」
そんな一品が、お正月の食卓をぐっと温かくしてくれます。

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月野和美砂

月野和美砂

季節の手仕事で整える 食文化ナビゲーター

公認スポーツ栄養士・管理栄養士。元教員。八ヶ岳と行き来しつつ、神奈川県を中心にスポーツ栄養セミナー、子育て期の保護者向け講習会をリアル・オンラインで行う。鍼灸柔整専門学校で栄養学も担当し身近な話でわかりやすい!と好評。時短や簡便な料理が全盛な世の中でも、季節の手仕事や各地の郷土料理など“つくる楽しさを味わう”ことを大切にしたいと考えている。食を通してからだもこころも「整える暮らし」を提案する。

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