食文化

裏のない清らかな心を象徴する「松風焼き」、母と語るおせちの変遷と家庭でのアレンジレシピ

<我が家のおせち>

実家のおせちを手伝うと、毎年同じように作っているつもりでも、
「あれ?ここ数年、松風焼き作っていないね」と気づく瞬間がありました。
松風焼きは、我が家のおせちに長く入っていた料理。
復活したのは“母のひとこと”がきっかけでした。
おせち料理は、こうして家族の会話や記憶と一緒に少しずつ形を変えていくのかもしれません。

松風焼きに必要な小道具「鉄扇串」

伝統的な松風焼きは、羽子板扇の形に切り分けます。
そのとき使う竹製の串が「鉄扇串(てっせんぐし)」。
母がしばらく松風焼きを作らなくなっていた理由は、この鉄扇串が手に入らなかったから。
田楽串とも違う特殊なもので、探すのも一苦労でした。
その時はネットで探して私が用意しました。

今は四角く切り、シンプルに盛り付けています。

松風焼きのいわれ

母が教えてくれたのは「裏がない=正直である」という意味。
表にはけしの実を振り、裏は何もつけない。
“裏のない清らかな心で一年を迎える”という願いが込められた料理です。
脂の少ない鶏ひき肉を使い、オーブンで焼き軽い仕上がりになります。

松風焼きⒸマイミータス

■チャレンジおせち「松風焼き」

主菜、調理時間20分、作りやすい分量

<材料>

鶏ひき肉…200g
ケシの実…小さじ1~2(なければ白炒りゴマ)
青ノリ…大さじ1

□A
 砂糖…大さじ1
 酒…大さじ1/2
 しょうゆ…大さじ1
 卵…1/2個(L玉以上なら1/3個)
 パン粉…15g
 みそ…大さじ1

<作り方>

① ボウルに鶏ひき肉とAを入れ、よく混ぜる。
② ①のだいたい半量(目分量でよい)をフライパンでから炒り※してボウルに戻し、ハンドブレンダーですべてをよく混ぜ合わせる。
③ オーブンを200℃で予熱し始める。その間に天板にオーブンシートを敷き、➁の種を全て乗せ、ゴムベラなどで表面を平らにし、厚み1~1.5cmの大きな四角に成形する。
④ ③の半分にケシの実かゴマ、半分に青ノリをふりかけ、予熱が完了したオーブンで12~15分(オーブンにより熱の強さが違うので様子を見ながら)焼く。

オーブンに入れる前の松風焼き左は青のり、右はけしの実。

⑤ ④が焼けたら取り出し、冷めたら包丁で好みの形に切る。
※追記:先に半分火を入れておくと焼いている間に肉が膨らんで爆ぜるのを抑えられます。

制作=管理栄養士・月野和美砂/Ⓒマイミータス

自家製ならではのアレンジを楽しんで

糖分や塩分の調整がきくのも手作りならでは。
肉を変えたり豆腐を加えたり、よりヘルシーにアレンジも可能です。
例えば、お正月から練習があるジュニアアスリートでも、お弁当おかずにできます。
季節感のある“ちょっと特別な作り置き”になりますよ。

八ヶ岳の合宿所で、ポールウォーキングをする方々の「オトナの合宿」を受け入れた際にも朝食のおかずとして松風焼きを出したことがあります。この時はけしの実の代わりに白ごまを使いました。

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月野和美砂

月野和美砂

季節の手仕事で整える 食文化ナビゲーター

公認スポーツ栄養士・管理栄養士。元教員。八ヶ岳と行き来しつつ、神奈川県を中心にスポーツ栄養セミナー、子育て期の保護者向け講習会をリアル・オンラインで行う。鍼灸柔整専門学校で栄養学も担当し身近な話でわかりやすい!と好評。時短や簡便な料理が全盛な世の中でも、季節の手仕事や各地の郷土料理など“つくる楽しさを味わう”ことを大切にしたいと考えている。食を通してからだもこころも「整える暮らし」を提案する。

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