食文化

旬を味わう ~さくら湯編〜 門出にそっと寄り添う、日本の小さな春のならわし

神奈川県では、先日高校入試が行われました。

確実に春は近づいています・・・

長く高校にいた私は、
1月終わりからこの時期、校内の空気がだんだんと変わるのを毎年感じていました。
そのまま卒業式の準備へと向かう、少し静かな時間。

この時期の学校は、3年生も自由登校などで生徒の数も減り、
忙しい中でもすこし静かな空気。
その中で確実に季節が動いている、独特の空気があります。

卒業式の日の、さくら湯

ある年、卒業式の日に職員室で“さくら湯”を入れてくださる先生がいました。

湯呑の中でふわりと花がひらく様子を見ながら、
「ああ、生徒たちを送り出したのだな」と、
大きな仕事を終えた感慨を静かに味わったのを覚えています。

桜湯という、日本の春のならわし

桜湯(さくらゆ)、ご存じでしょうか。

門出の季節にそっと寄り添う飲み物として、
日本には「桜湯」というならわしがあります。

桜の花の塩漬けに熱湯を注いだ花茶の一種で、
湯を注ぐと花がひらくことから
「未来が開く」に通じる縁起物とされています。

一方で、お祝いの席では
“お茶を濁す”という言葉を連想させるため、
あえてお茶を避けるという意味合いもあるのだとか。

そのため、結納や結婚式、
そして卒業などの節目に桜湯が添えられてきました。

桜湯のつくり方

つくり方はとても簡単です。
・塩漬けの桜の花をさっと水にくぐらせ、
軽く塩を落とします。

・湯呑の底にそっと花を置き、静かに熱湯を注ぐだけ。

器の中で花がひらく様子も、春のひとつの景色のようです。

桜の花の塩漬けはどこで作られている?

実は、桜湯に使われる「桜の花の塩漬け」の約8割は、
神奈川県秦野市で生産されています。

桜餅に使われる“桜の葉の塩漬け”が
静岡県松崎町で全国シェアの7~8割を占めていることは
比較的知られていますが、

花の塩漬けが地元神奈川で作られていると知ったのは、
私も数年前のことでした。

桜の花の塩漬けは「桜漬け」とも呼ばれ、
桜湯のほか、吸い物の椀種や蒸し物、酢の物、炊き込みごはんなどにも使われます。

七分咲きほどの八重桜を花柄付きのまま摘み取り、
塩と梅酢、あるいは塩だけで漬け込むのだそうです。
(参考:改訂調理用語辞典 社団法人全国調理師養成施設協会編)

小さな春の儀式を

この時期、スーパーでも桜の花の塩漬けを見かけることがあります。

卒業という人生の節目に。
あるいは、新しい一歩を踏み出す日に。

さくら湯を味わうという小さな春の儀式を、
今年は取り入れてみませんか。

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月野和美砂

月野和美砂

季節の手仕事で整える 食文化ナビゲーター

公認スポーツ栄養士・管理栄養士。元教員。八ヶ岳と行き来しつつ、神奈川県を中心にスポーツ栄養セミナー、子育て期の保護者向け講習会をリアル・オンラインで行う。鍼灸柔整専門学校で栄養学も担当し身近な話でわかりやすい!と好評。時短や簡便な料理が全盛な世の中でも、季節の手仕事や各地の郷土料理など“つくる楽しさを味わう”ことを大切にしたいと考えている。食を通してからだもこころも「整える暮らし」を提案する。

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