
季節が進むごとに、八ヶ岳の風の冷たさが増してきました。
朝晩の気温が10℃を下回るようになると、庭の栗の木から次々と実が落ちてきます。
落ち葉に混じって拾う栗は、まさに“秋のおすそ分け”。少し手間はかかりますが、そのひとつひとつの作業に秋の豊かさを感じます。
自然の栗には小さな住人が!?
この時期は本当に次々と栗が落ちてきます。
スーパーで買っていた頃は気づきませんでしたが、市販の栗は「虫止め」処理がされています。
自分で拾った栗は、まず選別してから虫止めと下ゆでを行います。
食べてしまっても健康への影響はほとんどありませんが、やはり気持ちの良いものではありません。虫と出会いたくない方は、スーパーで販売されているものを利用するのが安心です。
“時短”とは真逆の、じっくり栗仕事
いまの時代、「時短」「効率」が重視される中で、栗仕事はその真逆をいきます。
「採ったらすぐに作業を始めないといけない」
「何度もゆでこぼすため時間がかかる」
「温度変化をゆるやかに、そっと扱う」
──手間を惜しまず、時間をかけることでしか出せない美味しさがあるのです。
忙しい時期に栗を手にすると、思いのほか大仕事。
焦らず、少し時間に余裕を持って向き合うのがコツです。
秋の王道手仕事、栗の渋皮煮
栗仕事の中でもとくに手間がかかるのが「渋皮煮」。
それでも、渋皮が少しずつやわらかくなり、つるんと仕上がっていく過程はなんとも心が満たされます。出来上がりを口にした瞬間、「また作りたい」と思わせてくれる季節のごほうびです。
栗の一大産地は茨城県。次いで熊本、愛媛、岐阜と続きます。
これらの地域では、虫を防ぐために「低温+高電圧処理」というユニークな方法が使われており、
‐3℃で冷やしながら3500〜4500Vの電圧をかけることで、虫を防ぎつつ栗の糖度も高めているそうです。
一方で自然派の農家さんは、ミントやラベンダーのような虫よけ植物を植えたり、カマキリや鳥などの天敵を呼び込んだりして、虫とのバランスを保っています。
そういえば、私の宿泊施設のまわりでもカマキリをよく見かけます。もしかすると、栗の虫を狙ってやってきているのかもしれませんね。
《栗の渋皮煮(作りやすい分量)》
(材料)
栗 約500g
塩 小さじ2
重曹 小さじ2
(シロップ)
水 2カップ/砂糖 200g
※お好みで少量のブランデーを加えても美味しいです。
(作り方)
①栗を塩水に2時間ほど浸して皮をやわらかくする。
②包丁や栗むき器※Aで鬼皮をむく(渋皮は残す)。

③ 重曹を溶かした水に5〜6時間(または一晩)浸す。
④その水ごと火にかけ、静かに沸騰※Bさせて10分煮る。流水で渋皮をこすり取る。

⑤これを3〜4回繰り返し、湯の色が薄くなったらOK。

⑥新しい水を加え、静かに40〜50分煮ながら※C砂糖を3回に分けて加える。
⑦ 栗を取り出し、煮汁を半量まで煮詰めて栗を戻す。冷めたら完成。

※A「栗むき器」包丁でも可能ですが栗むき器は一つ持っているととても楽です。
※B「静かに沸騰」とは、栗がわずかに動く程度の火加減。
※C「静かに煮る」は、Aより少し強めの火加減を意識して。

虫止めの基本を知っておこう
自然の栗を使う場合は、虫止め処理を忘れずに行いましょう。
①よく洗い、水に浮かべて選別(浮いた栗は虫食いの可能性あり
②沸騰前(60〜70℃程度)の湯に5〜10分ほど浸ける
③その後すぐに水気を拭いて下処理、または冷蔵
“やってみようかな”が旬のタイミング
いかがでしたか?
私自身、年齢を重ねるにつれ「これ、自分でも作れるかな?」と思うことが増えました。
保存食やお菓子のレパートリーが少しずつ増えていく過程は、発見の連続です。
昔は本しか情報源がありませんでしたが、今は調べることがとても簡単な時代。
気になったら、まずはやってみましょう。
手間のかかる栗仕事も、きっと心に残る“秋の時間”になります。
手間をかけた分だけ、香りや味、そして達成感もひとしお。
栗の季節は短いですが、ほんの少し立ち止まって、秋の実りを味わう時間を楽しんでみてください。
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