「骨盤を立てる」。
言葉にするのは簡単ですが、自分の体が今どうなっているのか、自分自身で判断するのは意外と難しいものです。
「恥骨と太ももの付け根にあるでっぱり(上前腸骨棘、ASIS)を一直線にしましょう」
私のウォーキングレッスンの受講生は以前、そのような指導を受けたといいます。
ピラティスでいわれる「骨盤のニュートラルポジション」のことですが、その方は、それを真面目に守ろうとするあまり、腰が丸まってしまって骨盤が後傾。それを防ごうとして、下腹部にギュッと無理に力を入れることで体が固まっていました。
「私の骨盤は立っているのでしょうか」
その迷いを解消するために、歩き方だけでなく、姿勢改善のためにレッスンに通っています。
なぜ骨盤を立てる必要があるのか
そもそもなぜ、骨盤を立てる(起こす)必要があるのでしょうか。
それは、骨盤が「体幹(胴体)の土台」のような役割をしているからです。
建物でイメージしてみてください。基礎(骨盤)が大きく傾けば、その上にある柱(背骨)もバランスを崩します。倒れそうな柱を支えるために、壁や梁(筋肉)が必死になって引っ張り続けなければなりません。
これが慢性的な肩こりや腰痛、さらには受講生が感じていた無理な力みの原因になりやすいのです。
本来、骨組みが整えば、姿勢を保つのに必要な筋肉は最小限で済み、無駄な緊張からは解放されるはずです。頑張って力を入れ続けなければ維持できない姿勢は、どこか無理がかかっているサインかもしれません。
今回は、骨盤が正しい位置にあるかどうか、自分の手を使って、誰でも一瞬で判定できる「骨の物理法則」をお伝えします。
立ち姿勢の答え合わせ:手のひらの「三角形」が垂直か
自分の手のひらを、最も正確な「測定器」として使いましょう。
- まず、両手の親指と人差し指の先を合わせて、逆三角形を作ってください。
- そのまま、手のひらの下半分(手首に近い部分)を、腰の両サイドにある硬い骨の出っ張り(上前腸骨棘、ASIS)に当てます。
- 自然と、親指はおへその少し下あたりに、人差し指の先は下腹部(恥骨の方向)に向く形になります。
この時、お腹に当てた「三角形の面」の角度が、極端に傾いていないか確認してください。

- 人差し指側が前に出ている(面が上を向く):
これは「後傾」の傾向があります。腰が丸まり、膝が曲がりやすくなったり、逆につっぱったりしやすい状態です。 - 親指側が前に出ている(面が下を向く):
これは「前傾」の傾向があります。いわゆる反り腰で、腰の骨に負担がかかりやすい状態です。
目指すのは、この三角形の面が、「床に対してほぼ垂直」になっている状態です。
(※厳密には、解剖学的に「ほんの少し前傾」が自然な位置とされていますが、まずは分かりやすい目安として「垂直」を意識してみましょう。極端な前傾や後傾を防ぐことができます)
下腹部に適度な腹圧は必要ですが、無理に力を込める必要はありません。自分の骨盤が後傾、もしくは前傾だと感じたら、この三角形の角度を調整してみてください。太ももの前側の張りがふっと抜け、ストンと楽に立てる位置が見つかるはずです。
座り姿勢の答え合わせ:「座骨の点」を探す
椅子に座る際も、基準は「骨」です。座った際、お尻にあるゴリゴリとした硬い骨、「座骨(ざこつ)」を感じてみてください。
「骨盤を立てて座る」状態は、座骨という2つの点に、上半身の体重がストンと乗っている状態です。
- 背中が丸まる時は、座骨の「後ろ側」の面で座っています。
- 腰が反る時は、座骨の「前側」の面や太ももの裏で座っています。
座面に対して「点で支える」感覚があると、背もたれに頼らなくても、背骨は自然と上へと伸びやすくなります。そこに、「頑張って姿勢を保つ」という無理な努力はいりません。
正しい姿勢は「骨の積み重ね」
「正しい姿勢」とは、ガチガチに力を入れて作るものではなく、骨が積み木のようにきれいに積み上がり、余計な力が抜けていく状態のことを指します。
迷ったときは、いつでも自分の手で「三角形」を確かめてみましょう。ちょっとの確認で、あなたの姿勢が快適なものへと変わります。