山梨県へ向かう高速道路から見える景色が、最も華やぐ季節になりました。
笹子トンネルを抜け、勝沼インターを過ぎてしばらくすると、
下に広がるのは一面の桃色の風景。
あちこちに、まるでじゅうたんのように広がります。
桃源郷に出会う春
私の両親は、定年後に山梨県に小さな家を持ち、週末の田舎暮らしを始めました。
伊豆や房総など、いろいろな場所を見て回っていたそうですが、
最終的に山梨に決めた理由は——
春のこの時期に出会った、一面桃色に染まる“桃源郷”。
その景色だったと聞いたことがあります。
この地域では、桜だけでなく桃も、ほぼ同時に花を咲かせます。
山梨の観光シーズンが、ここから一気に扉を開く。
そんな空気を感じる時期です。

美しい景色の裏側で
中央道から眺める桃源郷の景色は、ただ美しいだけではありません。
その桃色のひとつひとつに、
農家さんが“今年の実り”を託し、受粉作業に向き合う姿があります。
雨に煙る桃畑の中でも、
確かに人の手で支えられている景色です。
北杜市と行き来するようになってから、
この時期、桃農家さんが受粉で大忙しになることを知りました。
受粉は天候に大きく左右されます。
雨が強くても
風が強すぎても
暖かいと思ったら急に寒くなっても——
すべてがリスクになります。
花がよく開いた、穏やかな晴天の日。
そんなタイミングを見計らって作業が行われます。
事前に咲き始めの花を摘み、乾燥させて花粉を取り、
その時に備えるのだそうです。
私たちは満開の景色に心を奪われますが、
農家さんにとっては、咲き始めからがスタートなのです。
津金学校に咲く桜
私は途中で高速を降り、一般道で北杜市大泉へ向かいます。
国道141号線を少し登り、横道に入ると「津金学校」があります。
この時期、そこには大きな桜の木が訪れる人を迎えてくれます。

津金学校は、明治・大正・昭和と三つの時代の校舎が並ぶ場所。
昭和60年に学校としての役目を終えましたが、現在は宿泊施設やレストランとして活用されています。

白い漆喰壁は、明治の息吹を今に伝える建築の名残。
漆喰は古くから日本にある素材ですが、
明治時代に西洋建築の影響を受け、白く端正な外観をつくる“ハイカラ”な仕上げとして広まりました。
明治8年に完成したこの建物にも、
当時の人々はきっと「新しい時代への憧れ」を感じたのでは…と感じます。
学校と桜という風景
昔、学校だった場所には、不思議と桜の木があることが多いように思います。
ここ津金学校でも、校庭の外側に大きな桜が並び、
この季節になると多くの人が訪れます。
山梨の春は、まだ続く
今年の山梨は開花が早く、
平地ではすでに花吹雪となり始めています。
富士山や南アルプス、八ヶ岳を背景に舞う花びらもまた、この時期ならではの景色です。
そして標高の高い場所では、これからヤマザクラが咲き始めます。
山梨の春。
花の美しさだけでなく、その裏側にある人の営みや、季節の移ろいを感じながら、
訪れてみてはいかがでしょうか。
(参考)津金学校とは