食文化

旬を味わう ~ホタルイカ編〜 富山・福井の春を思いながら、味わう一皿

今年は、春の訪れを知らせる“ホタルイカ”が豊漁だそうです。
神奈川に住んでいると、年によっては一度も出会えないまま季節が過ぎてしまうこともあります。
それが今年は、朝の情報番組でも取り上げられるほどの水揚げ量で、鮮魚売り場でもよく見かけます。

“産地の違い”を教えてくれた会話

10年以上前になるでしょうか。
当時私が通っていた編み物教室の先生が
「ホタルイカは富山か福井のがいい」と話していたことがありました。

その時は産地までよく見ていませんでしたが、その話を聞いた後から気になりだし
実際に富山産を食べてみると、なるほど…と納得。

ぷっくりとした身の厚み、ワタの濃さ、噛んだときに広がる“春の海”の香り。
同じホタルイカでも、こんなに違うのかと驚きました。

この大きなホタルイカに出会ってからは、売り場で見つけると買わずにはいられないように…でも年によっては全くみられないこともあります。

富山湾では産卵のために大群が接岸し、
定置網で傷をつけずに水揚げされるため、鮮度がよいのだそうです。

福井でも越前岬周辺で良質なホタルイカが揚がり、
どちらも“春の味”として長く愛されてきました。

実は私は、富山湾で見られるという“身投げ”の光景をまだ一度も見たことがありません。
夜の海に青白い光が揺れる様子を、いつか見てみたいなと思っています。

兵庫県産との違い、そして“海の旅”を想像する

一方で、通年でよく見かけるのは兵庫県産。
実は水揚げ量は兵庫県が全国1位なのだそうです。

兵庫産は小ぶりで扱いやすく、富山・福井のものは
産卵期に向けて丸々と太り、ワタの旨みが強い印象があります。

ただ、時々「兵庫県産」と表示されているのに、
どう見ても富山や福井のように大きくて子持ちのものに出会うことがあります。

これは私の想像ですが、
兵庫といっても日本海側の漁港で水揚げされるだけに、
富山湾へ向かう途中の“旅の途中のホタルイカ”が混ざっているのかもしれないな、と。

産地表示は“水揚げ地”なので、
海の中でどこから来たかまでは分からないのですよね。
そう思うと、魚売り場の一角にも小さな物語があるように感じます。

酢味噌和え、そして“春の体の声”を聞きながら

ホタルイカは小さな体に栄養がぎゅっと詰まっていて、レチノールやビタミンEも豊富。
これらは抗酸化作用により、活性酸素を除去して、動脈硬化や心筋梗塞などを防いでくれる役割があります。

一方で内臓ごと食べることもあり、プリン体は多め、コレステロールをとりすぎることにもつながりますので
私は“春の楽しみ”として頻度を調整しながらいただいています。

あえものは、衣を具に“着せる”こと

料理はやはり、定番の酢味噌和えがいちばん。
下処理の手間は同じなので、せっかくなら大きめのものを選ぶと満足感があります。
今は市販の小袋の酢味噌もあり便利ですが、酢味噌は自分でも作れます。
作り方はいろいろありますが、参考までに“簡単な酢味噌”を。

レシピ 手作り酢味噌

(材料)
・みそ(あれば白みそ) 大さじ2
・砂糖  大さじ1
・酢   大さじ1

・卵黄(※なくてもよい) 1つ分

(作り方)
・味噌と砂糖をよく混ぜ合わせ酢を少しずついれて全体をなじませ最後に卵黄を入れて全体が均一になるよう混ぜて出来上がり。

ボウルなどに材料を合わせるだけです。これは卵黄を最後に入れて混ぜ始めたところ。

できた酢味噌はドレッシングのようにいろいろな素材にかけていただけます。

卵黄は入れなくても作れますが、加えると濃度が出て、味がまとまりやすくなります。
白みそがあれば、よりやさしい風味に仕上がります。

この分量でも意外と量ができるので、ホタルイカに限らず、焼いたいかやボイルしたエビ、今の時期なら生わかめやうどなどと合わせても“春らしい一品”になります。

ふだんはドレッシングで食べるような野菜も、酢味噌で和えると少し“よそゆき”の顔になるのが不思議です。
あえものは、具材に衣を着せるような料理。

旬の素材にあわせるだけで香りがふわりと立ち上がるように感じます。

季節が進む前に、春の海をひとくち

今年は豊漁で、まだしばらくは店頭に並びそうです。
神奈川にいながら、富山や福井の春を思い浮かべて味わう一皿。
季節が進む前に、ぜひ“春の海の恵み”を楽しんでみてください。

≪出典・参考≫
富山湾のホタルイカの特徴・漁期・定置網漁法 
富山県観光公式サイト「富山で味わう絶品ホタルイカ」
2026年の豊漁報道(富山) 
日テレNEWS「ホタルイカ 初日の昨日不漁も 一転して豊漁に」(2026年3月2日)
水揚げ量ランキング(1位兵庫・2位富山・3位福井) 農林水産省「海面漁業生産統計調査」
ホタルイカの栄養(鉄分・コレステロール) 文部科学省「日本食品標準成分表2025年版(八訂)」

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月野和美砂

月野和美砂

季節の手仕事で整える 食文化ナビゲーター

公認スポーツ栄養士・管理栄養士。元教員。八ヶ岳と行き来しつつ、神奈川県を中心にスポーツ栄養セミナー、子育て期の保護者向け講習会をリアル・オンラインで行う。鍼灸柔整専門学校で栄養学も担当し身近な話でわかりやすい!と好評。時短や簡便な料理が全盛な世の中でも、季節の手仕事や各地の郷土料理など“つくる楽しさを味わう”ことを大切にしたいと考えている。食を通してからだもこころも「整える暮らし」を提案する。

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