春本番を迎え、本来なら心躍る新緑の季節。5月の不調は「黄砂」と「花粉」のダブル攻撃が原因かもしれません。
黄砂は単なる砂埃ではなく、アレルギー症状を増幅させる「着火剤」のような存在でもあります。黄砂がアレルギー症状を悪化させるメカニズムを解説します。粘膜を強化するビタミンAなど、「身体の内側からバリアを張る食事」や、家の中に粒子を持ち込まない生活習慣のコツを紹介します。セルフケアで、春の辛い症状を賢く和らげましょう。
1.意外な事実:5月は「黄砂」と「花粉」のピークが重なる時期
「黄砂は3月や4月のイメージ」という方も多いですが、実は5月も油断できません。
なぜ春に黄砂が多いのか?
黄砂は、中国大陸の内陸部(ゴビ砂漠やタクラマカン砂漠など)の乾燥地帯から、強風によって舞い上がった砂や粒子のことです。
春は大陸の雪が解けて地面が乾燥し、さらに「低気圧」が発達しやすいため、大量の砂が上空へ舞い上がります。春に発生しやすい偏西風に乗って、数千キロ離れた日本へ運ばれてきます。
5月にも黄砂は降る?
ピークは3~4月であるものの、過去の気象データを見ても、5月に大規模な黄砂が観測された事例は多くあります。5月は空気が乾燥し、風が強い日もあり、過去にも発生する年があり、注意が必要です。
春の「隠れ花粉」の正体
5月はスギ・ヒノキ花粉が落ち着く一方で、(地域によっては)カモガヤなどのイネ科花粉が増え始めます。さらに、春は黄砂の飛来時期とも重なるため、条件によってはイネ科花粉と黄砂が重なり、不調を感じやすくなることがあります。
2.なぜアレルギー体質は「黄砂」の影響を受けるのか?
黄砂は単なる「砂」ではありません。アレルギー体質の方が影響を受けやすいのは、科学的な理由があります。
「有害物質の運び屋」としての顔
黄砂の粒子は微細な土壌粒子で構成されており、飛来の過程でPM2.5などの大気汚染物質や微生物などが付着・混在することがあります。これらを吸い込むことで鼻やのど、目の粘膜に刺激を与え、炎症を引き起こす可能性があります。こうした影響により粘膜の防御機能が一時的に低下し、花粉や埃などに対して敏感になることがあると考えられています。

PM2.5(微小粒子状物質)と黄砂の違いは?
- 【黄砂】 砂漠の土ぼこりが風で運ばれてくるもので、粒子はやや大きめ。日本に飛来してくる間に汚染物質を吸着し、花粉と重なり不調の原因になることもある。
- 【PM2.5】大気中に漂う直径2.5μm以下の微粒子の総称。車の排気ガスや工場の煙などから出る非常に細かい粒子で、肺の奥まで入りやすいのが特徴です。
アレルギー症状を強める外部刺激
アレルギー体質の方は、もともと外からの刺激に敏感に反応しやすい傾向があります。
黄砂 のように細かな粒子が体に入ると、鼻やのどが刺激され、いつもより不調を感じやすくなることがあります。
その影響で、花粉などに対する反応が強く出てしまう場合もあり、花粉症の症状がつらく感じられることがあります。
アレルギー疾患と関連する様々な調査結果も
~喘息患者やアレルギー性鼻炎患者に影響が出やすい傾向も~
日本の乳幼児約1500人を調査したところでは、黄砂やPM2.5の濃度が上がると、以前に喘鳴の症状がなくても鼻・目・呼吸器の症状が出るリスクが高まる結果でありました。
日本の成人喘息患者112名の調査では、黄砂飛来日は非飛来日と比べ、鼻・喉などの上気道および下気道の症状が有意に悪化することが判明しています。特にアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などの鼻炎疾患がある場合には、症状が悪化していました。
また、症状だけでなく、(生活の質)にも影響がある結果もでています。アレルギー鼻炎や喘息を持つ18〜65歳を調査した結果、黄砂(砂嵐)は鼻や目の症状を悪化させるだけでなく、身体機能や活力、心の健康といった「生活の質(QOL)」を著しく低下させることが分かりました。周囲に黄砂が多く飛散している日に体調を崩しやい方がいる場合には、温かい気持ちでサポートしましょう。
3.黄砂ダメージを減らそう!体の内側から「バリア機能」を守る食生活とは
黄砂や花粉の侵入をゼロにすることはできません。「入ってきても負けない粘膜」の下地を作る食事のポイントを紹介します。

① 粘膜の「壁」を強化する:ビタミンA
鼻や喉の粘膜は、異物をブロックする最初の砦。ビタミンAは粘膜を正常に保ち、潤いを与える役割を担います。
◆おすすめ食材:人参、ほうれん草、かぼちゃ、小松菜など
◆ワンポイント:ビタミンAは脂溶性ビタミンのため、油と摂ると吸収率がアップします。人参のラペにオリーブオイルを加えたり、ビタミンAの多い野菜を炒め物にすると効率良く摂れます。
② 炎症を鎮める:ビタミンC
黄砂などの刺激によって体内で発生した「活性酸素」を除去し、炎症を抑えてくれます。
◆おすすめ食材:キウイ、いちご、みかん、パプリカ、じゃがいも、ブロッコリーなど
◆ワンポイント 5月は紫外線も強くなる時期。ビタミンCは肌のバリア機能維持にも欠かせないため、食後の口直しやおやつとして意識的に取り入れましょう。
③細胞の酸化を防ぐ:ビタミンE
「若返りのビタミン」とも呼ばれるビタミンEは、血行を促進し、細胞膜をダメージから守ります。
◆おすすめ食材: うなぎ、たらこ、かぼちゃ、モロヘイヤ、アボガド、アーモンド、米油など
◆ワンポイント 油を米油に変更したり、モロヘイヤやかぼちゃのおかずを常備菜に取り入れることで手軽に対策が可能です。
4.「食事以外」のQOL向上のヒント
食事で内側を整えたら、外側からの刺激も賢くカットしましょう。
「朝一番」の濡れ拭き掃除
黄砂は夜の間に床に降り積もります。起きてすぐ掃除機をかけると粒子を舞い上げてしまうため、まずはシートや雑巾でサッと拭き取るのが、鼻のムズムズを防ぐポイントの1つです。
帰宅後の「はたく習慣」と「即シャワー」
・玄関前で「はたく」習慣:帰宅時、玄関のドアを開ける前に、衣類や髪についた黄砂を払い落としましょう。花粉症対策と同様ですが、黄砂は粒子がより細かいため、表面をなでるように落とすのがコツです。
・「即シャワー」:髪や肌に付着した黄砂は、刺激物そのものです。帰宅したらシャワーを浴び、服を着替えて家の中に極力持ち込まない工夫をしましょう。
自律神経を整えるケア
黄砂による不調は、免疫システムの過剰反応です。自律神経が乱れると、アレルギー症状はより敏感に現れやすくなります。自律神経を整えるケアの一部を紹介しますが、別のコラム(4月は自律神経が乱れやすい、理由と対処法:https://mymitasu.com/meal/imai-kumi20260609)も参考にしてみてください。
・ぬるめのお湯で入浴: 38〜40℃程度のぬるめのお湯に浸かることで副交感神経を優位にし、免疫バランスを整えましょう。
・寝る前の粘膜ケア:異物が付着したままだと、寝ている間も免疫システムが戦い続け、脳が休まりません。帰宅時だけでなく、寝る直前にも鼻や目周りを洗浄し、刺激物質を完全にオフにしましょう。
30~50代の女性は、仕事や家事、ホルモンバランスの変化など、日々忙しく自身のケアが後回しになりがちです。
「いつもの花粉症だから」「このくらい大丈夫」と無理を重ねてしまうことも少なくありません。そんな時こそ、ご自身の体のサインに目を向け、無理のない範囲で「内側と外側」の両面からケアを取り入れ、5月の爽やかな風を少しでも心地よく感じられる日々に繋げていきましょう。

【参考文献】
1 Toshiko Itazawa, Kumiko T. Kanatani, et al: The impact of exposure to desert dust on infants’ symptoms and countermeasures to reduce the effects. Allergy. 75(6) 1435-1445,2020
2 Masanari Watanabe, Jun Kurai, et al: Effects on asthma and induction of interleukin-8 caused by Asian dust particles collected in western Japan. Journal of Asthma.51(6)595-602,2014
3 Tatsuya Mimura, Satoru Yamagami, et al: Sensitization to Asian dust and allergic rhinoconjunctivitis. Environmental Research. 132C:220-225,2014