食文化

母が最もこだわった「伊達巻」、学業成就を願う我が家の味と受け継いだ巻きの技

母が最もこだわってきたおせち料理が、黒豆と伊達巻です。
巻きの作業は、十数年手伝ってきた私にもなかなかやらせてくれず、
実家で一緒に作った時の最後の、そばで見守られながら巻かせてもらった、それ1回のみ。

結婚して初めての正月、実家からもらったおせち。
夫が「この伊達巻おいしい」と驚き、
あらためて材料を聞いたら“はものすり身”だったことにも驚きました。
母が60年以上続けてきたことが、今は私の手に引き継がれています。

伊達巻のいわれ

巻物に似ていることから「学業成就」
“伊達”の文字から「華やか」「洒落ている」という意味もあると言われています。

伊達巻の仕上げは“鬼巻きす”

一般的な巻きすとは違う、断面が三角形になるように削った太い棒状の竹を連ねた“鬼巻きす”。
これで巻くことで、伊達巻の外側に独特の美しい凹凸の筋ができます。

調べても伊達巻以外の用途はなさそうな”鬼巻きす”。この角が伊達巻の表面の凹凸になる。

母が長年使ってきた鬼巻きすを、今は私が使っています。
巻きやすく手に馴染む大切な相棒です。

伊達巻レシピ

(材料)1本分 オーブンの天板1つ分
・たまご  10こ
・すりみ  150g
・上白糖  100g
・みりん  大2
・塩    小1/3

(必要な道具等)
ミキサーかハンドブレンダー
オーブン
クッキングシート(Lサイズ)
鬼巻きす(なければ普通の巻きす)
輪ゴム(巻きすをとめておく)2本
ラップ

(作り方)
①天板を180℃に予備加熱する。天板は出しておく。
②Lサイズのクッキングシートを天板より大きめにカットし天板にセットする。角は少し折り曲げておく。

天板に少し水をふってからシートをのせると天板に付き安定しやすい。

③ミキサーに割り入れた卵を入れ、そのあとすり身と他の調味料もすべて入れてまわす。
④③を②の天板に流し入れ、余熱が完了したオーブンに入れて25分焼く。だんだん表面が焼けてくる。
⑤焼いている間に鬼巻きす、その上にラップを巻きすからはみ出るような状態でのせ広げて準備する。

⑥焼きあがったらやけどに気をつけながらすぐに天板を取り出し、焼けた面が下になるよう⑤の上へ「せーのっ!」で一気に巻きす&ラップにのせる。

オーブンから取り出したばかりの天板。上が焼けて茶色になっていることがポイント。
「せーのっ!」で焼き目側が下になるように巻きすの上へひっくり返しながらのせる。一発勝負なところ。

⑦(仮巻き)まだ熱いうちに巻きすで全体をロール状に巻き、輪ゴムで両端をとめ、1分ほど待つ。
⑧(本巻き)1分ほどたったら一度巻きすを緩め、再度まき直し輪ゴムで巻きを固定し、そのまま冷ます。

⑨⑧の粗熱が取れたら巻きすを外しラップのずれを直し冷蔵庫などに保管する。

⑩盛り付ける際に切り分け断面が「のの字」になるように盛り付ける。

のの字は「力が入る」⇒「エネルギーが満ちる」という意味で縁起がいいとされる。
盛り付けたおせち。鬼巻きすで巻くとこの左上のように筋がついたようになります。

日本の食文化は、家庭の台所からつながっていく
伊達巻の作業は難しい部分があります。
でも「自分で作った」という喜びは格別。

おせち食材が並ぶ年末の市場を見ると、
気負わないつもりが結局あれこれ買ってしまうのも、毎年のことです。

おせちは、日本の行事食の中でもっとも“日本らしさ”が残る料理。
ゆるくても、できる範囲でも、続けていくことで文化は受け継がれていきます。

伊達巻の生すりみ 購入先

生すり身は築地や豊洲だと個人向け少量は購入できません。私の住む周辺のスーパーや鮮魚売り場などでたずねても伊達巻に使うようなすり身を扱う店はないので製造元から取り寄せることにしました。

築地から買っていたものを商品を調べると小田原にある鈴松蒲鉾店でした。創業明治25年ということは今年で133年のお店です。

というわけで今はこちらに直接注文しています。2年ほど前には母の誕生日に店舗へ行ってきました。

すり身の余ったもの、あるいは買ったけれど伊達巻は作らないな~という場合は枝豆や紅ショウガなど入れて揚げ焼きすれば手作りさつま揚げになります。(生すり身には味がついていますので味付けは不要です)

小田原 鈴松かまぼこ店 https://suzumatu.o.oo7.jp/

参考:改訂「調理用語辞典」社団法人全国調理師養成施設協会編

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月野和美砂

月野和美砂

季節の手仕事で整える 食文化ナビゲーター

公認スポーツ栄養士・管理栄養士。元教員。八ヶ岳と行き来しつつ、神奈川県を中心にスポーツ栄養セミナー、子育て期の保護者向け講習会をリアル・オンラインで行う。鍼灸柔整専門学校で栄養学も担当し身近な話でわかりやすい!と好評。時短や簡便な料理が全盛な世の中でも、季節の手仕事や各地の郷土料理など“つくる楽しさを味わう”ことを大切にしたいと考えている。食を通してからだもこころも「整える暮らし」を提案する。

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