50代は本当に基礎代謝が大きく低下するのか
「若い頃は食べても太らなかったのに、最近はちょっと油断するとすぐ体重が増える」
「昔のようにダイエットしても体重が落ちにくい」
そんなふうに感じていませんか?
50代になると太りやすくなるのは事実です。でも、その原因を「更年期だから仕方ない」と思い込んでいませんか?
「年齢とともに基礎代謝が下がるから太りやすくなる」というのは、実は半分正解で半分間違いです。
確かに、閉経前後の女性ホルモン(エストロゲン)の減少は、基礎代謝(生きていくために必要な最低限のエネルギー消費量)の低下を招きます。
しかし、基礎代謝は加齢とともに緩やかに低下しますが、50代で急激に落ちるわけではなく、意外にも20代以降はそこまで大きな変化はないのです。
つまり、太りやすい体をつくっているのは、ホルモンの変化だけではないということです。

出典:厚生労働省 e-ヘルスネット(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-07-002)
「活動量の低下」と「食事の摂りすぎ」
近年の研究では、更年期での体重増加の原因は「活動量の低下」と「食事の摂りすぎにある」ことが分かってきています。動かないのにエネルギー摂取が多すぎるから太る、ということです。
下の図は、厚生労働省令和5年度「国民健康・栄養調査」の歩数の平均値のグラフです。女性の1日の歩数は40代は7172歩ですが、50代は6449歩と10%以上減少しています。

自分の生活を振り返ってみてください。食べている分、十分に歩いたり、動いたりしていますか?
- 仕事で座っている時間が長い
- 外出先では階段を使わず、エスカレーターやエレベーターを使う
- 子どもが大きくなり、家でのんびり過ごす時間が増えた
上記のような積み重ねが、気づかないうちに消費カロリーを減らしています。動かなくなることで筋肉量が減り、エネルギーを燃やす力(基礎代謝)もさらに低下していきます。
40歳以降、何もしなければ、筋肉は年間0.5〜1%ずつ減少すると言われています。特に脚の筋肉は全身の約7割を占めています。研究によると、60代では20代に比べて下肢筋肉量が約30%減少すると報告されています。
足の筋力が衰えると、「冷え」「むくみ」「体重増加」「疲れやすさ」などの悪循環に陥ります。放っておくと、将来的には「歩けない」「転倒しやすい」「寝たきりになる」リスクも高まります。日々、歩くことは「未来の自分への投資」なのです。

50代の体重管理、今日からできる3つのポイント
① ウォーキング、まずは「家の10歩」から
50代からのダイエットには「無理のない継続」が大切です。おすすめはウォーキング。運動が苦手な方でも気軽に始められます。
これでOK!ウォーキング方法
- 毎日10~15分 外歩きのまとまった時間が取れない人は、出勤途中や買い物ついでに歩く時間を確保
- 歩幅を意識する いつもより少し歩幅を広げると消費カロリーアップ
- 姿勢を整える 目線を上げて背筋を伸ばして歩くと、代謝も上がる
しかし、屋外を歩くとなると、「服や化粧や準備するまでが大変で…」という方は、室内ウォーキングをおすすめします。トイレまで、キッチンまでの10歩程度を丁寧に歩く。これを1日に何回も繰り返すだけでも変わってきます。
「ヘタな1万歩より、家の10歩」──家の中でも目線を上げて、足の裏でしっかり床を感じながら歩く。たったそれだけで、体の感覚が変わってきます。何よりも継続が大切ですので、できることからスタートしましょう。
② たんぱく質の摂り方に注意!
50代になると筋肉の衰えを防ぐために「たんぱく質をしっかり摂ろう」と考える方が増えます。もちろん、体の材料となるたんぱく質の摂取は大切です。ただし、「過不足なく」がポイントです。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、50〜64歳女性の理想的なたんぱく質目標量は摂取エネルギーの14〜20%。体重50kgの女性なら、1日に60g前後のたんぱく質が目安です(1食あたり20g程度)。


具体的には、調理前の肉や魚なら、手のひら1枚分で厚み1cmほどの量。これらは大体100gなので、含まれるたんぱく質は16~20gというイメージです(毎日摂りたいのは、肉類、魚介類、卵、乳・乳製品、大豆・大豆製品の五大食品群からのたんぱく質。1食の量を整えて、1日でバランスよく摂れると良いでしょう)。
1食におけるたんぱく質の量ってそれだけでいいの? という方もいるのではないでしょうか。「足りないよりは少し多めに」と考えて、たんぱく質過多になっている人もいるようです。
肉や魚には脂質も含まれているため、たんぱく質に偏った食事はカロリー過多になります。極端な糖質オフや食物繊維不足で、腸内環境も悪化していることもあります。もし、自分の食べ方が間違っていると思ったら、「50代の量と質を意識した食事」に改める必要があります。
たんぱく質の摂りすぎが太る原因に
- 必要以上に摂るとエネルギー過多で体脂肪に変わる
- ステーキやベーコンなど高脂質な肉類ばかり食べるとカロリー過多に
- 炭水化物や食物繊維不足で腸内環境が悪化
正しいたんぱく質の摂り方
- 脂質の少ない食品を選ぶ(鶏むね肉・白身魚・豆腐・納豆など)
- 1食あたりの目安は「手のひらサイズ」
- 炭水化物・食物繊維とセットで食べる
③ 質の良い睡眠で代謝アップ
更年期の体重をコントロールするには、「活動量の増加」「質量ともにバランスの良い食事」に加えて「良質な睡眠」もポイントです。睡眠が不足すると、脂肪を燃焼させる成長ホルモンの分泌が減り、食欲をコントロールするホルモンバランスが乱れ、代謝の低下を招きます。
50代以降は「寝ても疲れが取れにくい」と感じる人が増えています。次の習慣を意識して、質の良い睡眠がとれるようにしましょう。
良質な睡眠のための習慣
- ぬるめのお風呂(40℃前後)に10〜15分浸かる
- 昼寝は短めに
- 寝る前のスマホは控える
- 朝は太陽の光を浴びる
特に入浴は、血流を良くし、筋肉の疲れを取る効果もあるので、シャワーだけで済ませずに湯船に浸かることをおすすめします。
まとめ 「ちょっとした工夫」で変わる50代の体型
「50代だから太るのは仕方ない…」と思っていた方も、このように原因がわかれば対策ができますよね。

✅基礎代謝は思ったより低下しない
✅体重増加の原因は「活動量の低下」と「食事の量と質の偏り」
✅ウォーキング・食べ方・睡眠を意識すると改善できる
筋肉は年齢を問わず、刺激を与えれば必ず応えてくれます。「もう年だから」とあきらめるのではなく、動いてみたら不調が改善することがあるのです。
大切なのは無理なく続けることです。できなかった日があっても一喜一憂せず、できることを続けること。今からできることを1つずつ試して、楽しく健康的な50代を過ごしましょう。
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