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放置してはいけない、更年期以降の女性の高コレステロール血症

更年期とコレステロールの関係

更年期とは、一般に45〜55歳の女性が迎えるホルモン変化の時期のこと。卵巣機能が低下し、女性ホルモン(特にエストロゲン)の分泌が著しく減少します。

このエストロゲンは、血中脂質のバランスを保つ重要な役割を担っており、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の上昇を抑え、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やす作用があります。そのため、更年期以降はエストロゲンの減少に伴い、血中LDLコレステロールが上昇しやすくなるのです。

今後起こりうる3つのリスク

1. 動脈硬化の進行

高LDLコレステロール血症は血管内皮に炎症を起こし、プラーク(脂質のかたまり)を形成して動脈硬化を進行させます。特に閉経後の女性は、エストロゲンの保護がなくなるため、心血管疾患(狭心症、心筋梗塞、脳梗塞など)の発症リスクも上昇します。

2. 脂質異常に伴うメタボリックシンドローム

コレステロール異常に加え、内臓脂肪の蓄積、血糖値の上昇、高血圧などが加わると、全身の代謝バランスが崩れてメタボリックシンドロームとなり、心血管系への負担が増します。

3. 認知症リスクの上昇

最新の研究では、血中のLDLコレステロールが高いと、脳の血流障害やアミロイドβの蓄積が進み、アルツハイマー型認知症のリスクも高まる可能性が指摘されています。

具体的な5つの対策

1. 定期的な検査を習慣に

40代後半以降は年1回の血液検査で、LDLコレステロール(LDL-c)、HDLコレステロール(HDL-c)、中性脂肪(TG)をチェック。140mg/dL以上のLDL-cは要注意です。特に糖尿病や高血圧などがある場合は、徹底した管理が必要です。

2. 食事の見直し

飽和脂肪酸(バター、牛脂、加工肉など)やトランス脂肪酸の摂取を控え、不飽和脂肪酸(オメガ3=青魚、えごま油、亜麻仁油など)を積極的に取り入れましょう。水溶性食物繊維(大麦、海藻、納豆など)はコレステロールの吸収を抑える作用があります。野菜は1日350g以上、糖質やアルコールの摂りすぎには注意しましょう。

3. 適度な運動の習慣化

週に150分以上の有酸素運動(ウォーキング、スイミング、ヨガなど)は、HDLコレステロールを増加させ、内臓脂肪を減少させる効果があります。筋力トレーニングを加えると、基礎代謝の維持にもつながります。

4. 必要に応じた薬物療法

食事や運動では改善しない場合、スタチン系薬剤やエゼチミブ、PCSK9阻害薬などの薬物療法も視野に入れます。専門医の判断を仰ぎましょう。

5. 更年期症状への包括的対応

更年期障害(ホットフラッシュ、気分の落ち込み、睡眠障害など)により生活の質が低下すると、食生活の乱れや運動不足につながります。ホルモン補充療法(HRT)も含めた医療サポートを受けることも有効です。

まとめ

加齢やホルモン変化によって、更年期以降の女性における高コレステロール血症は自然な生理現象でもありますが、放置すると命に関わるリスクを高めます。だからこそ、今の自分の体と向き合い、定期的な検査、生活習慣の見直しといった「予防的ケア」を始めることが大切です。 更年期は終わりの時期ではなく、新たな健康ステージの始まり。未来の自分のために、今からできることを一つずつ始めていきましょう。

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今井久美

今井久美

食事で未来を変える栄養プランナー

管理栄養士。長年にわたり、病院やクリニックでの栄養相談・保健指導に従事。糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病改善、予防のための減量など、個別の状態に寄り添った栄養指導を得意とする。また、栄養士・管理栄養士を養成する専門学校の教員として14年間勤務し、後進の育成にも尽力。「今よりもっと健康で美しく」をモットーに、食事を通じて心と体の両面から健康をサポートしている。

  1. 放置してはいけない、更年期以降の女性の高コレステロール血症

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