50代を迎える頃、体のリズムが今までと違うと感じる瞬間が増えていきます。理由の1つが、女性ホルモン「エストロゲン」の急激な減少です。
エストロゲンの生涯分泌量は「耳かき一杯ほど」と例えられるほどの微量(※)。それでも、女性の体・心・肌・骨までも左右する力を持っているのです。
ここでは、エストロゲンの働き、更年期の仕組み、補い方を整理してお伝えします。
※実際にどれくらいかという具体的な数値は定まっていませんが、様々な研究から非常にごくわずかな量であることが示唆されています。
エストロゲンのすごい力
エストロゲン(主にエストラジオール)は、女性の体の中で多くの役割を担っています。
【エストロゲンの主な働き】
・肌のハリ・潤いを守る(コラーゲンを増やす)
・骨密度を保つ(骨からカルシウムが抜けるのを防ぐ)
・血管をしなやかにする
・自律神経を安定させる
・気分の安定(セロトニンと関係)
・体型・脂肪のつき方に関与
これらを「耳かき一杯ほど」がコントロールしているのですから、驚きしかありません。
エストロゲンは更年期に乱高下しながら減少
40代後半から50代に入ると、エストロゲンは「きれいに少なくなる」のではなく、波のように上がったり下がったりしながら低下していきます。
分泌量が減るだけではなく乱高下することで、自律神経がついていけなくなることが、更年期の不調の原因です。
【代表的な更年期症状】
・ホットフラッシュ(急な暑さ・のぼせ)
・動悸
・不安・気分の落ち込み
・眠れない
・肩こり
・皮膚の乾燥
・太りやすくなる
「理由がわからない不調」は、体の中でホルモンの波が揺れているサインなのです。
エストロゲンは閉経後ゼロになるの?
エストロゲンは閉経後、完全になくなるわけではありません。量は激減しますが、副腎、脂肪細胞が少量のエストロゲン(エストロン)を作り続けています。
ただ、量はピーク時の10分の1以下に減少。そのため、骨密度や血管、気持ちの揺らぎが出やすくなるのです。
エストロゲン不足を補う方法
エストロゲン不足による不調を和らげる方法には次のものがあります。
① ホルモン補充療法(HRT)
医学的に最も効果が確立している方法です。
<特に効果が見込める症状>
・不眠
・気分の落ち込み
・ホットフラッシュ
・骨密度の維持
<注意点>
・子宮体がんのリスクはプロゲステロン併用で防げる
・乳がんリスクなどは医師との相談が必要(「飲むタイプ」が高め、「貼るタイプ・塗るタイプ」は低リスクと言われている)
② 大豆イソフラボン(植物性エストロゲン)
大豆に含まれる「イソフラボン」は、体の中で弱いエストロゲンのような働きをする成分です。エストロゲンがゆらぎやすくなる50代の体をサポートしてくれる“植物性の力”とも言えます。
<メリット>
・ホットフラッシュの軽減
・骨の健康をゆるやかにサポート
・食事から自然に取り入れられる安心感
<注意点>
ただし、サプリなどで高濃度を摂りすぎると、月経不順や乳腺刺激が報告されることもあります。
そのため、基本は「食品から適量」をとるのがおすすめです。納豆、豆腐、味噌汁、きな粉…私たちの食卓になじみのある大豆食品なら無理なく、安心して続けられます。
③ 行動・呼吸・運動・睡眠で整える
ホルモンそのものは戻せませんが、揺らぎに対応しやすい体は育てられます。
特に効果が大きいのは
・ウォーキング(血流・代謝改善)
・深い呼吸(自律神経が整う)
・入浴(副交感神経優位へ)
・良質な睡眠
・腸内環境を整える
マイミータスの軸である「歩く・食べる・眠る・整える」。これらはすべて更年期ケアと直結しています。
エストロゲンが過剰になることはある?
閉経後の日常生活では、エストロゲンが過剰に分泌されることはほぼありません。
例外は
ホルモン分泌性腫瘍
HRTの量が過剰
などの医療的ケースに限られます。
「過剰かも?」と心配する必要は基本的にはありません。
更年期でエストロゲンと付き合うには

エストロゲンは、耳かき一杯ほどの量で何十年も私たちの体を守ってきた相棒です。確かに、50代からその量は減っていきますが、それは「自分で整える力”を育てていく時期が始まったということでもあります。
歩く。
食べる。
休む。
深く呼吸する。
必要なら医療の力も借りる。
これらを丁寧に積み重ねることで、50代からの体はもっとしなやかに軽くなっていきます。
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