前回のコラム(「お酒とアレルギーの意外な関係。体調に合わせた「心地よいお付き合い」と思いやり」)では、アルコールそのものが体に与える影響や、アレルギー症状を引き起こす引き金になる仕組みについて解説しました。
今回はさらに一歩踏み込んで、「お酒の原材料や製造プロセス」に隠れているアレルゲンについて紹介します。
「お酒だから大丈夫」
「飲み物だからアレルゲンは関係ない」
このように思われる方もいらっしゃると思います。
しかし実際には、お酒の原材料やカクテルの副原材料の中に、食物アレルギーの原因となる食品が含まれていることがあります。アレルギーをお持ちの方はもちろん、ご家族やご友人にアレルギーのある方がいる場合も知っておくと安心する内容を紹介します。
実はお酒にもアレルゲンが含まれることがある
お酒の原材料は種類によってさまざまです。
例えば、
・ビール:麦芽、小麦(一部)
・発泡酒:麦や小麦を使用する商品がある
・日本酒:米
・焼酎:米、麦、そばなど
・果実酒:ぶどう、桃、りんごなど
といったように、食品と同じく原材料があります。
特に注意したいのは、そば焼酎や果実系リキュールなどです。
そばアレルギーの方がそば焼酎を避けることは比較的知られていますが、意外と見落とされやすいのがカクテルです。
商品名だけでは分かりにくいカクテルのアレルゲン
カクテルやサワー、果実酒などはフルーティーで飲みやすく、女性に大人気です。
しかし、カクテルは複数の材料を組み合わせて作るため、商品名だけではどんな原材料が入っているのか分かりにくい場合があります。
特に注意したい、カクテルや割材(ベース)に潜む代表的なアレルゲンをご紹介します。
1「卵」や「乳成分」が使われているカクテル
• カシスミルク・カルアミルク・抹茶ミルク カクテルの名前に「ミルク」と入っているものは分かりやすいですが、リキュール自体に乳成分が含まれている場合もあります。
• エッグノッグ、サワー系カクテル(伝統的なレシピ) 海外のレシピや本格的なバーでは、カクテルの泡立ちやコクを出すために「卵白」を使用することがあります。「ウイスキーサワー」や「ピスコサワー」といったメニューには卵白が使われているケースがあるため、卵アレルギーをお持ちの方は事前の確認が必要です。
2.「リンゴ」や「モモ」などの果物類
• シードル(リンゴの醸造酒) ビール感覚で飲めるシードルはリンゴが主原料です。バラ科の果物(リンゴ、モモ、キウイなど)にアレルギーがある方は注意しましょう。
• サングリア、フルーツパンチ ワインに漬け込まれたフルーツだけでなく、隠し味として様々な果実のシロップやジュースがブレンドされていることが多く、パッと見では全成分が分かりにくいのが特徴です。
・ファジーネーブル 桃のリキュールとオレンジジュースで作られています。桃アレルギーの方は注意が必要です。
3.「ナッツ類」を使ったリキュール
• アマレット(杏仁のリキュール) 杏の種(あんずの核)を使用していますが、アーモンドに似た香気を持つため、ナッツ類アレルギーの方は成分をよく確認することをおすすめします。店舗によりレシピが異なるケースがあり、同じカクテル名でも使用する銘柄や副原材料が異なるため、店員に必ず確認しましょう。
• ヘーゼルナッツリキュール(フランジェリコなど) 実際にナッツ類が原材料として使用されているため、重篤な症状を経験したことがある方は特に注意が必要です

意外な盲点「泡」「クリーム」「トッピング」
近年は見た目が華やかなカクテルも増えています。
・ホイップクリーム
・アイスクリーム
・チョコレートソース
・ナッツ類
・クッキー
・フルーツピューレ
などが使用されるケースもあります。
SNS映えするおしゃれなドリンクほど、思わぬアレルゲンが含まれていることもあります。

「ノンアルコールのカクテルだから安心」と思って注文したら、豪華なトッピングにアレルゲンが含まれていた、というケースもあります。注文時に「トッピングにどんな材料を使っているか」「トッピングを外してもらえるか」を確認することも大切です。
製造プロセスの裏側:清澄剤として使われるアレルゲン
原材料として直接お酒に入っていなくても、「製造の途中でアレルゲンが使われる」というケースがあります。
お酒の濁りを取り除いて透明度を高くするための「清澄(せいちょう)剤」です。
ワインや日本酒、一部のビールなどの製造工程では、以下のような物質が伝統的に使われることがあります。
• 卵白(アルブミン):ワインの渋み(タンニン)や澱(おり)を取り除くため
• 乳成分(カゼイン):白ワインの変色を防ぎ、雑味を抑えるため
• 魚の浮き袋(アイシングラス):ビールの混濁物質を沈殿させるため

ただし、これらは最終製品中にはほとんど残らないとされており、多くのアレルギーをお持ちの方は過度に心配する必要はありません。
一方で、極めて微量でも症状が出る重度の食物アレルギーの方は、お酒の席に参加される前に主治医の指示を確認することが大切です。
最近では、植物由来(豆類や粘土鉱物のベントナイトなど)の清澄剤を使用した「ヴィーガン対応」を明記したワインも販売されていますので、選択肢として知識を入れておくと安心材料の1つになることもあります。
おつまみ選びにも少しだけ配慮を
お酒の場をさらに盛り上げてくれるのが、美味しいおつまみです。ただし、居酒屋やバルでのメニュー選びには、少し視野を広げてみましょう。
ナッツの盛り合わせ、チーズフォンデュ、エビの唐揚げ(甲殻類)など、定番のおつまみにはアレルギーを引き起こしやすい食材が数多く並びます。
おつまみは、トマトスライス、叩ききゅうりなど原材料が複雑に混ざり合っていないシンプルなメニューは、アレルゲンを特定しやすく、リスクを大幅に減らすことができるため、みんなでシェアするおつまみにシンプルなメニューを入れておくこともお勧めです。
楽しい宴が始まる最初の一歩として、「みんな、何か食べられないものやアレルギーはある?」とカジュアルに確認し合う習慣をつけてみましょう。
事前に把握しておくことで、全員が安心して箸を伸ばせるメニュー選びができ、アレルギーを持つ方も気兼ねなくその場を楽しむことができます。
アレルギーのある方もない方も、お酒を飲む人も飲まない人も、同じテーブルを囲む全員が笑顔になれること。その空間こそ、本当に楽しいお酒の席ではないでしょうか。
「お互いへの少しの配慮」をスパイスに、大切な人たちと安心して健やかに過ごせる、心地良いひとときをみんなで一緒につくっていきましょう。