人生100年時代

化粧品では防げない! ほうれい線・たるみの真犯人は「頭蓋骨」―正しい咀嚼で10歳若返る(前編)

40代から始ま頭蓋骨の萎縮、その影響は?

骨粗鬆症(骨粗しょう症)というと、脚や腰骨がスカスカになるというイメージがあるかもしれませんが、身体全体の骨、つまり、頭蓋骨の骨密度も低下します。

年齢とともに、顔のしわやたるみも気になりますが、これは皮膚や筋肉の問題だけでなく、実は顔の土台となる頭蓋骨の変化が潜んでいるのです。

兵庫・姫路市のきみえ歯科の中村喜美恵院長は、「腰椎よりも骨密度が低下し始める年齢が早く、減少率も大きいのが頭蓋骨」と話します。頭蓋骨は、腰椎よりも骨密度の減少率が10%も大きく、減少し始める年齢も早いのです。

中村院長 40代から骨密度は緩やかに低下し始め、50代に入ると骨の梁(はり)構造が減少してきます。それにより、頭蓋骨は少しずつ萎縮していきます。

若い頃は骨の上にぴったりと乗っていた顔の筋肉や皮膚は、この萎縮とともに支えを失い、下へとずれ落ちます。その結果、ほうれい線の深まり、フェイスラインのたるみ、目元や口元のしわなど、顔の老化現象が加速していくのです。

咀嚼が骨に与える振動と刺激の効果

骨の健康を守るには、バランスの良い食事と適度な運動が欠かせません。

丈夫な骨づくりに必要なカルシウム、ビタミンD、ビタミンKなどの栄養をしっかり摂り、ウォーキングや筋力トレーニングなど骨に刺激を与える運動が不可欠です。

ここで、頭蓋骨の健康を守る運動にあたるのが、「咀嚼=噛むこと」です。頭蓋骨は咀嚼の振動によって刺激を受け、強化されます。1日3回の食事で、しっかり噛むことが大切となってきます。

頭蓋骨を守る正しい噛み方

しかし、ただ噛めば良いわけではありません。

中村院長 重要なのは「咀嚼時の姿勢」と「咀嚼の位置」です。どの歯や顎の筋肉を主に使い、どのような姿勢、動きで噛んでいるかがポイントになります。

悪い姿勢は咀嚼筋や顎関節に余計な負担をかけ、正しい噛み方をさまたげます。猫背やストレートネックは顔の筋肉の位置にも影響するので、たるみや二重あごの原因になります。

■理想的な咀嚼のポイント

  • 両足裏をしっかり床につけて椅子に座り、背筋を伸ばす
  • うつむかず顔をあげる(顎を前に出さないよう注意)
  • 大臼歯部を意識し、左右で均等に噛む(左右の歯を別々に使う)
  • 一口につき30回以上を目安に、ゆっくり噛む(歯をぶつけて噛まないこと)

このような姿勢での咀嚼は頭蓋骨全体にしっかり振動を伝え、頭蓋骨の衰えを遅らせます。逆に、肘をついた姿勢やスマホを見ながらの「ながら食べ」では、奥歯をうまく使えず、骨や筋肉の衰えを早めてしまうのです。

嚙みながら若返る!唾液の効果

咀嚼によって分泌される唾液は、美容にとっても、健康にとっても重要です。

中村院長 唾液には“美肌ホルモン”と呼ばれる成分が含まれ、皮膚のターンオーバーや保湿力をサポートします。また、口腔内の自浄作用により、虫歯や歯周病予防にもつながります。さらに、舌の良い動きは、首から上にある約70種類の筋肉と、体の約4分の1を占めるリンパ節を同時に刺激します。これにより血流やリンパの流れが改善され、むくみやくすみの解消にも効果的です。

正しい咀嚼と姿勢で「10年後の顔」が変わる

頭蓋骨の萎縮を防ぐには骨量の維持に加え、筋肉の維持も必要です。筋肉がしっかりしていれば、多少骨が痩せても皮膚や脂肪を支える力が残ります。

中村院長は、そのためには「顔筋エクササイズが有効」と言います。

40代以降の顔の変化を食い止めるには、肌表面だけのケアでは不十分。頭蓋骨という“土台”を守ることが大切です。さらに、正しい咀嚼と姿勢を習慣化してしわやたるみの進行を遅らせ、若々しい表情を保っていきましょう。

後編では、自宅でできる「舌回し」や「咬筋(こうきん)ほぐし」などのエクササイズを紹介します。

中村喜美恵

きみえ歯科院長

中村喜美恵(なかむらきみえ)

京都大学薬学部、大阪大学歯学部を経て大阪大学歯学部付属病院で勤務後、2003年、姫路市に「きみえ歯科」を開業。「お口と全身はひとつながり。口腔環境と全身の状態には密接な関係がある」として、「健康に美しく!」をテーマに、予防を中心に歯科からの情報発信を続けている。(一社)日本ホームヘルスコーチ協会認定ホームヘルスコーチ、アンチエイジング歯科学会認定医、糖尿病協会登録歯科医。

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