特定保健指導(健康診断後の生活習慣指導)をしていると、肥満の人に尿蛋白±や+の人が多いと感じます。尿蛋白陽性は腎機能を表す指標ですが、腎機能以外でも全身状態を表していることもあります。
尿蛋白陽性が示すこと
1. 糸球体のろ過障害
健常な腎臓では、糸球体で血液をろ過しても蛋白質は尿中に漏れません。糸球体のろ過膜が傷つくと、アルブミンなどの蛋白質が尿中に漏れ出すようになります。これは、慢性腎臓病(CKD)や糖尿病性腎症、高血圧性腎障害などの初期兆候です。
2. 尿細管の再吸収障害
一部の蛋白質は糸球体を通過しても、尿細管で再吸収されます。尿細管の機能が低下すると、再吸収されるはずの蛋白が尿中に残るため、尿蛋白陽性になります。これは、間質性腎炎や薬剤性腎障害などで見られます。
3. 一過性の生理的変化
発熱、激しい運動、ストレス、脱水などでも一時的に尿蛋白が陽性になることがあります。この場合は、再検査で陰性になることが多く、病的意義は低いです。
4. 全身性疾患の反映
糸球体障害は、糖尿病・高血圧・膠原病(SLEなど)・感染症などの全身疾患の一部として現れることがあります。尿蛋白は、腎臓だけでなく全身の病態を反映する指標でもあります。
これらのことから、尿蛋白が陽性になる場合は、腎臓の糸球体に負担がかかっている可能性を示しています。健康診断で測定する腎機能を表す指標は、下記のものもあります。
血清クレアチニン(Cr)
| 項目 | 説明 |
| 定義 | 筋肉の代謝産物で、腎臓から尿中に排泄される物質 |
| 正常値 | 男性:0.7〜1.2 mg/dL、女性:0.5〜1.0 mg/dL(施設により差あり) |
| 意義 | 腎臓がどれだけ老廃物を排泄できているかを示す |
| 注意点 | 筋肉量・性別・年齢・食事(肉類)に影響されやすく、単独では腎機能の正確な評価が難しい |
推算糸球体濾過量(eGFR)
| 項目 | 説明 |
| 定義 | 血清Cr・年齢・性別から計算される腎臓のろ過能力の推定値(mL/min/1.73m²) |
| 正常値 | 約90以上が目安。60未満で慢性腎臓病(CKD)の可能性あり |
| 意義 | 腎臓が1分間にどれだけ血液をろ過できるかを示す。腎機能の実質的な評価に有効 |
| 注意点 | 高齢者では加齢による自然な低下もあるため、蛋白尿など他の所見と併せて評価することが重要 |
まとめ
腎臓は、細かい血管が多く、1日に約1500Lもの血液をろ過しています。つまり、血管の状態を示す指標でもあります。健診結果で血圧、脂質、血糖値は気にするものの、腎機能は関心がない人も多いようです。尿蛋白陽性は血管に炎症がある場合があります。肥満の人が尿蛋白陽性の場合、減量すると改善する場合が多いため、まずは減量しましょう。
参考文献
- 日本腎臓学会「慢性腎臓病診療ガイドライン2023」
- 厚生労働省「特定健診・eGFRの導入と意義」
コメント