人生100年時代

50代女性が知っておきたい「更年期」の身体変化と正しい向き合い方

突然汗が出る、夜中に何度も目が覚める、気分が沈みやすくなった…。
最近、そんな“なんとなく不調”を感じていませんか?

50代女性にとって、「更年期だから仕方ない」と思いがちな体と心の変化は、実は緩和することができるものです。

閉経前後の更年期、9割が何らかの不調

更年期とは「閉経(1年間月経が来ない状態)前後のホルモン変化に、体が適応していく移行期」のこと。日本人女性の平均閉経年齢は約50歳(50.5歳前後)ですが、個人差が大きく、近年やや遅延傾向にあるという報告もあります。早い人では40代前半、遅い人では50代後半になることもあり、その前後10年ほどが更年期といわれています。

更年期には、多くの女性が何らかの症状を経験するといわれており、ある調査では9割近い女性が何らかの不調を感じるとしています。

参照:首都圏デジタル産業健康保険組合(https://www.sdi-kenpo.or.jp/imfine/2022/09/08/kounenki/index.html#)。

しかし、その多くが「我慢」で乗り切ろうとし、結果的に生活の質(QOL)を下げてしまうケースも少なくありません。

この記事では、50代女性が知っておくべき更年期の身体変化・典型的な症状・セルフケアの基本、専門家に相談すべきタイミングまでを整理してご紹介します。

50代女性が知っておきたい「更年期」の身体変化とは

更年期では卵巣機能の低下により、エストロゲン(女性ホルモン)の分泌が急激に減少。このホルモン変化が自律神経や感情のバランス、骨密度、代謝など、体全体に影響を及ぼします。

更年期の主な身体変化

  • 自律神経の乱れ=ホットフラッシュ(ほてり・発汗)、冷え、動悸など
  • 代謝の低下=体重増加、むくみ、脂質異常
  • 骨・筋肉の変化=骨量減少、筋力低下、関節痛
  • 睡眠の質の低下=入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒など

こうした変化は、個人差が大きいのが特徴です。数カ月で治まる人もいれば、数年続く人もいます。

※更年期症状の個人差について
厚労省調査では、「医療機関を受診した人」は、50代ではわずか9.1%で8割以上が受診していない。症状が軽い人も多く、必ずしも全員が治療を必要とするわけではないとしている。
参照:日本産科婦人科学会「更年期障害について」(https://www.jsog.or.jp/citizen/5717/)

更年期症状の典型的な症状チェックリスト

以下の項目をチェックして、自分の体調を見直してみましょう。

  • □ホットフラッシュ・睡眠障害・気分の揺れ
  • □顔がほてる・汗が止まらない
  • □ 寒暖差に敏感になった
  • □ 夜中に何度も目が覚める
  • □ 以前よりイライラしやすくなった
  • □ やる気が出ない・気分が沈む
  • □ 肩こりや関節痛が増えた
  • □ 動悸や息切れを感じる
  • □ 月経周期が不規則、経血量に変化
  • □ 髪や肌の乾燥が進んできた

3つ以上当てはまる場合、更年期によるホルモン変化の影響を受けている可能性が高いといわれます。

更年期になぜ起こる?ホルモン変化と体への影響

更年期の中心的な変化は、卵巣で作られるエストロゲンの減少です。

エストロゲンは、骨・血管・皮膚・脳など、女性の健康に幅広く関わる重要なホルモン。そのため、分泌が減ると多方面に影響が出ます。

ホルモン変化のメカニズム

脳(視床下部)はエストロゲンの低下を感知し、卵巣に「もっとホルモンを出して!」という信号を送ります。
しかし、卵巣はすでに機能低下しており、その指令が空回り。結果として自律神経が混乱し、発汗やほてり、感情の乱れが起こります。

体への具体的な影響

  • 骨密度の低下
    エストロゲンには骨を強く保つ働きがあるため、その減少により骨密度が低下し、骨粗しょう症のリスクが上昇します
  • コレステロール値の上昇
    エストロゲンはコレステロールを減らす働きも持っています。そのため、エストロゲンの減少は悪玉(LDL)コレステロールの上昇につながり、動脈硬化や高血圧のリスクを高めます。
  • 肌・粘膜の乾燥
    エストロゲンは肌の潤いを保つ役割も果たしています。分泌が減少すると、肌や粘膜が乾燥しやすくなり、膣の乾燥感や性交痛などの不快な症状を引き起こします。
参照:更年期ラボ(https://ko-nenkilab.jp/equol/about05/boneloss/#)

更年期症状を和らげる生活習慣とセルフケアの基本

更年期症状を軽くするには、「ホルモンを整える」「自律神経を安定させる」ことがポイントです。薬や治療に頼る前に、日常の過ごし方を見直すだけでも体調が変わります。

① 睡眠リズムを整える

・朝起きたら太陽の光を浴びる
・寝る2時間前からスマホやPCの操作を控える
・寝室の温度、湿度を整える(18~20℃、湿度50~60%)

② 食事でホルモンをサポート

・大豆イソフラボン(豆腐・納豆・豆乳)
・良質なたんぱく質(魚・卵・鶏むね肉)
・カルシウム・ビタミンD(小魚・乳製品・きのこ類)

③ 軽い運動で自律神経を安定

ウォーキング、ストレッチ、ヨガなど、「息が弾むくらい」の運動を週3回程度行うと、血流が良くなり、ホルモンバランスも安定しやすくなります。

④ メンタルケアを意識する

「気分の揺れ」はホルモンだけでなく、生活の変化(子どもの独立、親の介護、退職など)も影響しています。一人で抱え込まず、信頼できる友人や専門家に話すことも大切です。

また、これらをすぐに完璧にやろうとせず、「朝日を浴びて深呼吸」などできることから始めるのもポイント。小さな習慣の積み重ねが、更年期を穏やかに過ごす第一歩になります。

専門家に相談すべき症状のサイン&タイミング

生活習慣改善で更年期症状が緩和されることもありますが、症状が日常生活に支障をきたす場合は我慢せず、早めに専門家に相談することも大切です。

次のような症状が続く場合は、婦人科・更年期外来を受診しましょう。

  • 日常生活に支障が出るほどのイライラや不安
  • 夜眠れない日が続く
  • 動悸・息切れ・頭痛・めまいが頻繁にある
  • 骨折しやすくなった、身長が縮んだ

婦人科では、血液検査でホルモン値を測定し、必要に応じてホルモン補充療法(HRT)を提案されることもあります。HRTは、減少したエストロゲンを補う治療で、のぼせや発汗、関節痛などの身体的な不調だけでなく、不安感や気分の落ち込みといった精神的な症状にも効果が期待できるとされています。

ただし、5年以上の長期使用によって乳がんリスクが上昇する可能性や、血栓症のリスクがあるため、定期的な検査と医師との相談が重要です。

参照:ホルモン補充療法 日本産婦人科医会(https://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/01/HRT201603.pdf)

我慢せず、自分をいたわる更年期の過ごし方

「更年期」は誰にでも訪れる自然な変化です。それを“我慢の時期”と考えるか、“体と心を見直すチャンス”と捉えるかで、その後の人生が変わります。

50代の今こそ、自分の体の声を丁寧に聴き、セルフケアを始めるタイミング。一歩踏み出すことで、「50代からがいちばん心地よい私」へと変わっていくことができるのです。

参照:公益社団法人 日本産科婦人科学会「更年期症状」ほか(https://www.jsog.or.jp/citizen/5717/)

関連記事:更年期 骨粗鬆症 コレステロール

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飯田みさ代

飯田みさ代

大人女子健康プロデューサー/ウォーキング講師

記者・編集者として日刊スポーツ新聞社に34年間勤務。紙面だけでなく、Webやモバイルサイトのコンテンツ制作にも長く携わる。ジュニアアスリートの食事を支える情報サイト「アスレシピ」では編集長を務め、成長期の子どもを持つ保護者、特に母親たちから多くの支持を集めた。

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