腎臓は、血液をろ過して老廃物を排出し、体液・電解質・酸塩基バランスを調整する重要な臓器です。成人では1日に約1,500Lもの血液を濾過しています。腎臓の機能が低下して働かなくなると、毒素が体に溜まってしまうため、人工透析をすることになります。機能の低下を予防するためには早期発見が重要で、2018年から特定健康診断の項目に腎機能を評価する尿蛋白に加え、クレアチニン、eGFR(推算糸球体濾過量)が追加されました。
腎臓は機能が30%以下になるまで自覚症状が出にくく、「沈黙の臓器」と呼ばれます。そのため、生活習慣の見直しと定期的な検査が重要です。
腎臓を悪化させる生活習慣
| 習慣 | 解説 |
| 過剰な塩分摂取 | 過剰な塩分は血圧上昇を招き、腎臓の微細血管を傷つけます。 |
| 水分不足(慢性的脱水) | 水分摂取が少ないと老廃物の排出が滞り、腎結石や急性腎障害のリスクが高まります。 |
| 過剰な動物性たんぱく質摂取 | 高たんぱく食は腎臓のろ過負担を増やし、長期的に糸球体硬化を促進します。 |
| 肥満・内臓脂肪の蓄積 | メタボリック症候群は腎臓病の主要リスク因子。脂肪細胞由来の炎症性サイトカイン(ホルモン様タンパク質)が腎障害を促します。 |
| 喫煙 | ニコチンは腎血管を収縮させ、慢性的な虚血状態を引き起こします。 |
| 過度なアルコール摂取 | アルコールは利尿作用と脱水を招き、腎臓の濃縮機能に負担をかけます。 |
| 鎮痛薬(NSAIDs)の常用 | 市販の鎮痛薬は腎血流を低下させ、長期使用で腎障害を引き起こすことがあります。 |
| 睡眠不足 | 睡眠不足は交感神経を刺激し、血圧上昇と腎血管への負担を増加させます。 |
| 運動不足 | 運動不足は代謝異常を招き、糖尿病性腎症や高血圧性腎症のリスクを高めます。 |
| ストレス過多 | 慢性的なストレスはコルチゾール分泌を促進し、腎臓の血管機能に悪影響を及ぼします。 |
腎機能の低下には加齢も大きな要因で、日本人の75歳以上の3人に1人、85歳以上の2人に1人は慢性腎不全です。
腎臓の加齢変化
- 糸球体濾過量(GFR)の低下:40歳以降、GFRは年1mL/min/1.73m²ずつ低下し、80歳では約半分になることもあります。これは腎血流量の減少と糸球体数の減少によるものです。
- 尿濃縮力の低下:加齢により腎臓での水の再吸収能力が低下し、脱水リスクが高まります。夜間頻尿や低ナトリウム血症の原因にもなります。
- 薬物代謝の変化:腎排泄型の薬剤(例:NSAIDs、抗菌薬など)の血中濃度が上昇しやすくなり、副作用リスクが増加します。
また、女性は更年期以降、エストロゲン低下により血管機能が変化し、腎血流が不安定になりやすいため、より注意が必要です。
腎臓の機能を低下させないためには、運動と食事が大切です。
運動と腎臓の関係
適度な運動のメリット
- 血圧の安定化:有酸素運動(ウォーキング・水中運動など)は血圧を下げ、腎臓の微細血管への負担を軽減します。
- インスリン感受性の改善:糖尿病性腎症の予防に有効。筋肉量の維持が血糖コントロールに寄与します。
- 肥満の改善:内臓脂肪の減少により、腎臓への圧迫や脂肪由来サイトカインの影響を減らします。
- 尿酸値の調整:軽度の運動は尿酸代謝を促進し、高尿酸血症のリスクを下げます。
食事と腎臓の関係
腎臓にやさしい食事のポイント
- 塩分制限(目安:6g/日未満) → 高ナトリウム食は血圧上昇と糸球体負荷を招きます。
- たんぱく質の質と量の調整 → 腎疾患がない場合は適正量(体重×1.0〜1.2g/日)を摂取。腎機能低下時は医師・管理栄養士の指導のもと制限が必要です。
- カリウム・リンの管理 → 腎機能が低下するとこれらの排泄が困難になります。加工食品にはリンが多く含まれ、食品選択に注意が必要です。
- 水分摂取(目安:1.5〜2L/日) → 尿量を確保し、老廃物の排出を促進します。ただし心・腎疾患がある場合は医師の指示に従います。
- 抗酸化食品の摂取 → 野菜・果物・魚に含まれる抗酸化成分(ビタミンC・E、ポリフェノールなど)は腎臓の酸化ストレスを軽減します。
まとめ
日々の生活の中であまり痛みを感じることがない腎臓は、重要な臓器であることを忘れがちです。腎臓が長く健康に働いてもらうために、毎日の生活習慣と定期検査が重要であることを忘れないようにしましょう。
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