栄養相談をしていてよく質問される痩せ薬。痩せるきっかけとして使用することは悪いことではないですが、メリット、デメリットを理解して、使用を検討してください。今回は代表的な2剤について解説します。
1 GLP-1受容体作動薬(マンジャロなど)
使用目的と作用機序
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬は、2型糖尿病治療薬として開発されましたが、食欲抑制・胃排出遅延・血糖コントロールを通じて体重減少効果も期待され、肥満治療にも応用されています。マンジャロ(チルゼパチド)はGLP-1とGIPの両受容体に作用し、より強力な体重減少効果を示します。
保険適応の条件
- 対象疾患 2型糖尿病
- 食事・運動療法で血糖コントロールが不十分
- 他の薬剤で効果が得られない
- 医師が必要と判断した場合
※肥満治療目的では現時点で保険適応外
※自費診療の場合の1ヶ月約25,000〜80,000円
利点
- 食欲抑制により自然な摂取量減少
- 血糖値の安定化(インスリン分泌促進・グルカゴン抑制)
- 週1回の注射で継続しやすい
- 体重減少率が高く、糖尿病合併症予防にも寄与
注意点
- 吐き気・下痢・便秘などの胃腸症状(特に開始初期)←不快でやめる人もいる
- 低血糖(他薬併用時)
- 自費の場合は高額
- 生活習慣を改善しないと中止後にリバウンドしやすい
2 アライ(オルリスタット)
使用目的と作用機序
アライは消化管内のリパーゼを阻害し、食事由来の脂肪の約25%を吸収せずに排出する市販薬です。2024年に日本で発売され、内臓脂肪減少を目的とした肥満治療薬として注目されています。
購入条件(薬局で販売)
- 18歳以上
- 腹囲:男性85cm以上/女性90cm以上
- BMI:25以上35未満
- 肥満関連疾患(糖尿病・高血圧・脂質異常症・心疾患・肝疾患・腎疾患など)がないこと
利点
- 食事中の脂肪吸収を抑制
- 内臓脂肪減少に特化
- 医師の処方不要で購入可能(条件あり)
注意点
- 油分の多い食事で下痢・脂肪便などの副作用
- 脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収低下←重要!
- 食事内容を改善しないと効果が限定的
- 継続しないと体重が戻る可能性あり
まとめ
薬剤による体重減少は、食欲や吸収の一時的な抑制に過ぎません。薬を使うことで「減量のきっかけ」は作れますが、生活習慣を変えなければ確実にリバウンドします。特にGLP-1系は中止後に食欲が戻りやすいため、薬に頼りすぎない減量計画が重要です。
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