食事

寒くなる季節ほど水分摂取に注意

専門学校に勤務していた時に、就職活動中の学生が健康診断結果を持ってきました。「赤血球が異常値で再検査指示になりました。僕は病気ですか?」と。運動大好きな元気印の男子学生で、健康には自信があったためショックだったようです。「検査の前日、運動した?検査前日に水分をしっかり摂って検査を受けてみて」そうアドバイスし、その結果、異常なし。つまり脱水でした。

また、運動会の時に、具合が悪くなって救護に来る学生の多くは朝食を食べていない人でした。具合が悪くなる原因の1つに熱中症が多いのですが、朝食を摂らないことで食事からの水分摂取がなく、脱水傾向になりやすいためです。

暑い時期は熱中症予防で水分摂取を意識しますが、寒い季節こそ、水分摂取への配慮が大切です。気温が低くなると汗をかく量は減りますが、皮膚や呼吸からの見えない水分損失(不感蒸泄)は続きます。室内の暖房による乾燥や運動量の減少も合わさって、気づかないうちに慢性的な脱水状態に陥りやすく、特に高齢者や子どもは体内の水分量や感覚機能の違いから、脱水リスクが高まります。

必要な水分量とは

人体の約55~65%は水分で構成され、そのうち約2/3は細胞内液、1/3は細胞外液です。水は体温調節や栄養素の運搬、老廃物の排出、消化吸収など、生命活動のあらゆる場面で不可欠な役割を担っています。

水分の摂取源は主に以下の3つです。

  • 飲料水(水、麦茶、ノンカフェイン飲料 など)
  • 食事由来の水分(ご飯やパン、野菜、果物、スープ類 など)
  • 代謝水(栄養素が体内で代謝される際に発生する水分。1日あたり約200~300ml)

日本人の一般的な食生活では、食事から1日約900~1,000mlの水分を摂取しています。味噌汁やスープ、煮物、果物や生野菜など、水分を多く含む食品を取り入れることで、自然に水分補給ができます。一方、パンや焼き物、揚げ物など水分が少ない料理が中心の日は、飲み物などで意識的に補うことが必要です。

必要な水分量は体格や活動量などによって異なりますが、目安として健康な成人の場合、体重1kgあたり30~35mlの水分が1日に推奨されます。例えば体重60kgの方であれば、1,800~2,100mlが基準です。なお、運動や発熱、環境温度によって必要量は増減します。

高齢者や疾患を持つ人は脱水に注意

腎臓は体内の水分量を調節する重要な臓器です。腎機能が低下すると脱水リスクが高まるため、特に高齢者や疾患を持つ方は注意が必要です。また、カフェインやアルコールを含む飲み物は利尿作用が強く、純粋な水分補給には不向きです。水や麦茶、ノンカフェイン飲料を基本としましょう。

脱水を早期に発見するポイントは尿の色・量・回数を観察することです。尿の色が濃くなったと感じたら、脱水の可能性があります。

水分摂取のコツ

水分補給のコツは、「喉が渇く前に少量ずつこまめに飲む」ことです。一度に大量に摂取するよりも、100~150ml程度を分けて飲むことで体への負担を減らせます。特に運動後、入浴後、起床時は水分が不足しやすいため、意識して補給しましょう。

まとめ

水分摂取は脱水予防だけでなく、便秘や尿路感染症の予防、認知機能の維持、血流や代謝の安定にも役立ちます。食事と飲料を組み合わせてバランスよく摂ることが大切です。寒い季節は水分摂取を忘れがちですが、健康維持のために食事と飲み物の両面から計画的に水分補給を心がけましょう。

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今井久美

今井久美

食事で未来を変える栄養プランナー

管理栄養士。長年にわたり、病院やクリニックでの栄養相談・保健指導に従事。糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病改善、予防のための減量など、個別の状態に寄り添った栄養指導を得意とする。また、栄養士・管理栄養士を養成する専門学校の教員として14年間勤務し、後進の育成にも尽力。「今よりもっと健康で美しく」をモットーに、食事を通じて心と体の両面から健康をサポートしている。

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