食事

人は野菜や果物を食べる必要がある! その理由は?

美味しい秋の味覚が出回り始めました。美味しい好きなものだけ食べて過ごしたいですが、やはり栄養バランスを考えて食事をする必要があります。実は、人間を含む一部の動物だけがビタミンCを体内で作れません。このため、私たちは生きるためにビタミンCを食べ物から摂る必要があります。

人間がビタミンCを作れないのはなぜ?

多くの動物、例えば犬や猫、マウスなどは、体内でビタミンC(L-アスコルビン酸)を自ら合成することができます。彼らにとってビタミンCは「ビタミン」(本来は体内で作れない必須栄養素)ではありません。しかし、人間、チンパンジーなどの霊長類、そしてモルモットなどは、この能力を失っています。

欠損した「最後の仕上げ」酵素

動物がビタミンCを合成する過程は、主にブドウ糖を原料としてスタートし、いくつかの化学変化を経て進みます。この合成経路の最終段階、つまりビタミンCを完成させる「最後の仕上げ」の役割を担っているのが、「L-グロノラクトン酸化酵素」という酵素です。

人間や猿の祖先において、この酵素の設計図である遺伝子に、長い進化の過程で複数の突然変異が生じました。この変異によって、酵素が全く作られなくなったり、作られても機能しなくなってしまったのです。

この「最後の仕上げ」の酵素がないため、私たちはどれだけブドウ糖を体内に持っていても、そこからビタミンCを作り出すことができなくなってしまったのです。

ビタミンC合成能力を失った進化の背景

なぜ、私たちの祖先は、こんなにも重要な能力を失ってしまったのでしょうか?これには、当時の食生活が深く関わっていると考えられています。

食物からの豊富な摂取

霊長類の祖先が進化していた時代は、熱帯や亜熱帯の環境で生活しており、ビタミンCが非常に豊富に含まれる果物や葉っぱを日常的に大量に食べていました。

  • 十分にあるなら、自分で作る必要がない:食べ物から常に十分すぎるほどのビタミンCが供給されていたため、体内でビタミンCを作る能力は、生存にとって絶対に必要な能力ではなくなりました。
  • エネルギーの節約:体内で何かを合成するには、必ずエネルギー(カロリー)と材料が必要です。合成能力を失ったことで、そのエネルギーを他の生存に必要な活動(繁殖や移動など)に回すことができ、むしろ有利になった可能性があります。

合成能力を失っても不利益がなく、むしろエネルギーを節約できたため、変異を持った個体が生き残り、その遺伝子が集団全体に広まってしまった、これが「ビタミンC合成能力の喪失」の主な説です。

ほとんどの動物がビタミンCを作ることができる

対照的に、合成能力を持つほとんどの動物は、ブドウ糖から主に肝臓(または腎臓)でビタミンCを生成しています。

さらに驚くべきことに、ビタミンCを合成できる動物は、精神的・肉体的なストレスにさらされた時や病気の時には、体内で合成するビタミンCの量を劇的に増やします。これは、ビタミンCの持つ強力な抗酸化作用を利用して、ストレスによって発生する体内の有害物質(細胞を傷つける活性酸素)を消去し、体を守るためだと考えられています。

人間の場合、この重要な防衛システムが失われているため、ストレスや病気の時には、特に意識してビタミンCを補給することが大切になります。

まとめ 人間は食べ物からの摂取が必須

ビタミンCは、単に風邪予防に良いだけでなく、私たちの体にとって必要不可欠な栄養素です。

  1. コラーゲンの合成:皮膚、骨、血管などを構成するコラーゲンを作るために必要で、これが不足すると血管が脆くなる壊血病という病気になってしまいます。
  2. 抗酸化作用:体内で発生する活性酸素を無害化する、非常に強力な抗酸化作用を持っています。
  3. ミネラルの吸収促進:食事中のなどの吸収を高める働きがあります。

人間は、この重要なビタミンCを体内で作ることができません。そのため、毎日、食べ物から欠かさず摂取し続けることが、健康を維持するための唯一の方法となります。

ビタミンCの供給源として、最も手軽で重要なのが野菜と果物です。

  • 果物:レモン、オレンジ、キウイ、いちごなど
  • 野菜:ブロッコリー、パプリカ(特に赤・黄)、じゃがいも、さつまいも、キャベツなど

ビタミンCは水溶性熱に弱いという性質を持っています。そのため、調理する際は、生で食べる(サラダなど)、または短時間で加熱する(電子レンジや蒸す)などの工夫をすると、効率よくビタミンCを摂取できます。

ビタミンCを豊富に含む野菜や果物を日々の食生活に取り入れ、失われた「合成能力」を食事で補うことで、健康で生き生きとした毎日を送りましょう。

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今井久美

今井久美

食事で未来を変える栄養プランナー

管理栄養士。長年にわたり、病院やクリニックでの栄養相談・保健指導に従事。糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病改善、予防のための減量など、個別の状態に寄り添った栄養指導を得意とする。また、栄養士・管理栄養士を養成する専門学校の教員として14年間勤務し、後進の育成にも尽力。「今よりもっと健康で美しく」をモットーに、食事を通じて心と体の両面から健康をサポートしている。

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