例年になく春が早かった今年。
このゴールデンウイークは、いつもの年より緑が濃くなっている気がします。
この時期、八ヶ岳へ向かう農産物直売所、帰りの中央道上り線の談合坂SAなどでもたけのこを見かけます。
にぎわう農産物直売所で、土の香りをまとったたけのこを見ると、「ああ、春だな」と思います。

たけのこのあく抜きを覚えたのは30代のころ。
初めてのときは、実家に電話をして母に聞いたのを覚えています。
以来、春になると毎年のように、たけのこをゆでています。
昔ながらの米ぬかに戻った理由
わが家では、たけのこのあく抜きに米ぬかを使います。
けれど以前、「米ぬかは気分の問題で、実際にはそれほど意味がない」そんな話を耳にしたことがありました。
それなら、とその際に紹介されていた生のまま皮をむく方法なども試してみたのです。
ところが、これがなかなかうまくいきません。
皮はきれいにむけず、たけのこは割れるように崩れ、思った以上に捨てる部分も多くなりました。
結局、昔ながらの方法に戻りました。
手間がかかるように見えて、いちばん無駄がなく、仕上がりもよかったのです。
経験の中にあった“調理科学”
なぜ、ゆでてから皮をむくとうまくいくのか。気になって調べてみました。
生のたけのこは水分が多く、細胞がまだやわらかいため、皮をむこうとすると崩れやすい。確かにその通り、見た目もよくなかったのです。
一度ゆでることで組織が落ち着き、皮と身の境目もはがれやすくなります。
さらに米ぬかや米のとぎ汁には、えぐみを和らげたり、香りを整えたりする働きもあるとされています。
科学的に見れば万能ではないかもしれません。
それでも昔の人たちは、何度も試しながら「これがいちばんよい」と知っていたのでしょう。
経験の積み重ねの中に、ちゃんと理にかなった知恵がある。
そんなことを、たけのこを前にすると毎年感じます。
「成長」「再生」を象徴する料理 若竹煮
あく抜きをしたたけのこは、わかめと合わせて若竹煮にすることが多いです。

山の幸のたけのこ。
海の幸のわかめ。
同じ季節に出会う食材同士は、味も自然となじみます。
日本料理には、そんな季節の組み合わせを大切にする考え方があります。
また春は田植え前、新生活、節句など“始まり”の季節。
若竹煮は「成長」「再生」を象徴する料理として、祝い膳に登場することもありました。
たけのこのほろ苦さと、わかめの磯の香り。
そこにだしが加わると、春らしい雰囲気の味になります。
わが家では、ここに鶏ひき肉と玉ねぎの肉団子も加えます。
旨味が全体をやさしくつなぎ、一皿で満足できる煮物になります。
山の季節が少しずつ進んでいく
以前、八ヶ岳の農産物直売所で、生産者さんが教えてくれました。
孟宗竹のあとには淡竹(はちく)、その次に真竹(まだけ)が出てくるよ、と。

淡竹や真竹はえぐみが少なく、皮をむいてそのまま調理しやすい種類です。
竹の種類が変わるたび、山の季節が少しずつ進んでいく。
そんな自然の時計があることを知りました。
春のたけのこは、ただの旬の味ではなく、
季節の移ろいまで教えてくれる食べものなのかもしれません。
たけのこ、農産物直売所で出会ったら、やってみませんか。