食事

花粉と関連する食物アレルギーとは/アレルギー表示にない食品にも注意しましょう!

近年、小児に限らず成人も食物アレルギー患者が年々増加しています。このサイトを読んでいる方の中で、ご自身が大人になってからアレルギーにより特定の果実や豆類等が食べられなくなった、または周囲で大人になってから果実や野菜、大豆等が食べられなくなったという話を耳にされた方もいるのではないでしょうか。

成人の食物アレルギーが増えている要因の1つに「花粉-食物アレルギー症候群」(PFAS=pollen-food allergy syndrome)が挙げられます。この疾患は、花粉症患者が花粉の抗原と果実、野菜、豆類どの植物性たんぱく質が似ている食品を食べた際に、口腔内や咽頭にかゆみ、イガイガなどのアレルギー症状が出ることが特徴です。発症時期は、思春期以降に発症することが多く、大人になってから発症する食物アレルギーの代表的な疾患の1つです。

近年増加中の花粉-食物アレルギー症候群の背景とは

花粉‐食物アレルギー症候群患者が増加傾向にある背景として、1つに花粉症有病率の増加があります。昨今の気温上昇や温室効果ガスの増加により花粉の飛散シーズンの長期化や花粉飛散量の増加をもたらし、これらの気候変動も花粉症患者増加の要因と考えられています。

また、アレルギー患者は年々増加傾向にあり、2019年の日本の調査では、花粉症と診断された患者は42.5%、10年間で10%以上増加している結果でした。花粉-食物アレルギー症候群は、居住地域や食文化によっても発症リスクが異なりますが、食物アレルギーの30~60%が関連していることも増加要因に影響を及ぼしていると考えられます。他にも、食物アレルギー発症はライフスタイルの変化や輸入食品の増加なども関わっているともいわれています。

花粉と関連のある食品とは

では、どのような食品が花粉と関連しているのでしょうか。花粉-食物アレルギー症候群と関連する花粉と食品の組み合わせは、表1の通りです。

表1 花粉-食物アレルギー症候群に関連する花粉と食品

多数の食品と花粉の関連があること、さらにアレルギー特定原材料28品目以外の食品もアレルギーがあることに驚かれた方も多いことと思います。ただし、花粉症患者全員が発症することはないため、過度に恐れる必要はありません。

シラカンバやハンノキの多い北海道や兵庫では、カバノキ科(ハノキ、シラカンバ等)の花粉症患者の20~40%は、バラ科の食品(りんご、もも、あんず等)を食べた際に口腔のアレルギー症状を申し出ている調査報告があります。また、スギ花粉患者の10~20%は、メロン、キウイ、トマトなどを食べた時に口腔のアレルギー症状を申し出ている報告があります。

症状としては、口唇や口腔内、咽頭の腫れやかゆみ、違和感などがほとんどであるものの、稀に原因食物を食べた後に運動をした後にアナフィラキシーが起きる事例もあるため、注意が必要です。

除去内容は1人1人異なります

花粉-食物アレルギー症候群と診断された際には、原因食物の摂取を控える必要があります。ただし、加熱・加工したジャム、缶詰、加熱料理ではアレルゲンとなるタンパクが変性するために、加熱した食品や料理では症状が出ないこともあります。医師から加熱した食品の摂取は問題ないと指示がある場合には、躊躇わずに摂取して頂いて構いません。トマトや大豆など一部の食物によっては加熱・加工していても、アレルギー症状が出るケースもあります。個人個人除去範囲が異なるため、自己判断せずに医師と相談してから摂取するようにしましょう。

一方で、花粉-食物アレルギーと診断されたことで、アレルギー症状が出る可能性のある食物を全て除去する必要はありません。稀に、アレルギー発症が心配でアレルゲンの食品を過度に除去している患者さんも見受けられます。花粉-食物アレルギー症候群に関連する食品を全て除去することで、栄養バランスが崩れる可能性も出てきます。

アレルギーが心配な場合には、適切な食事管理のためにもかかりつけ医に不安な気持ちを伝え、食べられる食品・加工状態を確認しておきましょう。

このコラムを読んでいる方の中で、花粉飛散量の多い時期に特定の食べものを食べて体調に違和感を感じたり、果実や野菜を食べた時にアレルギー症状が出た経験がある場合には医療機関を受診し、ご自身がアレルギーがあるかどうか、何を注意しておく必要があるのか確認されることをお勧めします。

≪参考文献≫
1 Isabel J Skypala:The impact of climate change in pollen food allergy syndrome. Curr Opin Allergy Clin Immunol. 25(2):129-133,2025

2 Pascal Poncet , Hélène Sénéchal,et al: Update on pollen-food allergy syndrome. Expert Rev Clin Immunol. 16(6):561-578,2020

3 Chisato Inuo,Fumiko Okazaki, et al:Generalized allergic reaction in response to exercise due to strawberry gibberellin-regulated protein: a case report.Allergy Asthma Clin Immunol.18:49,2022

4 Takae Kobayashi, Naoshi Shimojo, et al : A case of food-dependent exercise-induced anaphylaxis due to grape gibberellin-regulated protein. Pediatr Allergy Immunol.33(9):e13850,2022
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乳井美和子

乳井美和子

アレルギーと環境起因疾患から身を守るサポーター

管理栄養士。長年食物アレルギーなどのアレルギー疾患患者の食事や生活指導を行っている。食事や環境を整え、より豊かな暮らしに導くヒントを広める活動を展開中。

  1. 花粉と関連する食物アレルギーとは/アレルギー表示にない食品にも注意しましょう!

  2. 地球環境が変化していく中でより豊かな人生を過ごしていくために/管理栄養士・乳井美和子からのメッセージ

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