正確な結果を得るために・・・
「そろそろ健康診断の時期ですね」 そう声をかけると、多くの方が「最近ちょっと食べすぎてて…」「前の日だけ調整すれば大丈夫ですよね?」と笑いながら話してくれます。
でも、健診は“今の自分の体の状態”を知る大切な機会。 できるだけ正確な結果を得るためには、前日だけでなく、数日前からの過ごし方がとても大切です。
今回は、管理栄養士としての経験を交えながら、 「健診前に気をつけたいこと」 「やってはいけないこと」 「正確な結果を得るための生活の整え方」 を紹介します。
1. 健診は“今の自分”を知るチャンス
健診は、病気を見つけるだけでなく、
- 生活習慣のクセ
- 栄養状態の偏り
- ストレスや睡眠の影響
など、体のサインを読み取る大切な機会です。
私はこれまで多くの方の健診結果を見てきましたが、 「前日に食べなかったから数値が下がった」 「水をたくさん飲んで薄めた」 という自己判断による“調整”をしてしまう方も少なくありません。
しかし、それでは本当の状態がわからず、 必要な対策が遅れてしまうこともあります。
健診は“良い結果を作る日”ではなく、 “今の体を知る日”です。
2. 健診前にやってはいけないこと
① 前日に極端な食事制限をする
「前日だけサラダにしたら数値が良くなる」 これはよくある誤解です。
極端な食事制限は、
- 血糖値
- 中性脂肪
- 肝機能
などの数値を逆に乱すことがあります。
食事制限による低血糖の後は、血糖値を上げようと体が糖を作ろうとするため、逆に血糖値が高くなる場合もあります。
② アルコールを飲む
アルコールは肝機能の数値を大きく変動させます。 2〜3日前から控える のが理想です。「いつも飲んでいるので、前日もいつも通りたくさん飲みました」という方もいらっしゃいますが、数値が上がっているのは飲酒のせいと考え、他の疾患を見つけ損ねてしまうことがあります。
③ 激しい運動をする
筋肉の炎症で CK(クレアチンキナーゼ) 値が上昇し、 異常値として出ることがあります。
④ 水分を極端に増やす・減らす
水分量の調整で数値は変わりますが、 それは“本当の状態”ではありません。
3. 健診前に気をつけたい生活習慣(3〜5日前から)
① 食事は“いつも通り”を意識
ただし、
- 揚げ物
- スイーツ
- 夜遅い食事
は控えめに。血糖値や中性脂肪の急上昇を防ぐためです。
② 睡眠を整える
睡眠不足は、
- 血糖値
- 血圧
- ホルモンバランス
に影響します。
③ 水分はこまめに
脱水は血液を濃くし、 腎機能や赤血球数など血液検査の数値に影響します。
4. 前日の過ごし方(ここが1番大事)
① 夕食は軽めに、脂質は控えめ
おすすめは、
- ごはん
- 味噌汁
- 魚
- 温野菜 などの和食。
脂質の多い食事や夕食量が多いと中性脂肪を大きく上げます。
② 夜更かしをしない
睡眠不足は血圧や血糖値に影響します。
③ アルコールは絶対に控える
肝機能の数値(AST・ALT・γ-GTP)や中性脂肪は、 飲酒の影響を強く受けます。
5. 当日の注意点(空腹時検査の場合)
① 朝食は食べない
水はOKですが、食事や菓子以外にも
- ジュース
- コーヒー(砂糖・ミルク入り)
- ガム
もNGです。
② 薬は医師の指示に従う
血圧の薬など、 「飲んでよい薬」「控える薬」があります。
③ 水分は少量ならOK
脱水を防ぐため、 コップ1杯程度の水は問題ありません。
6. よくある“誤解”
● 「前日に食べなければ体重が減る」
→ 見かけの体重は減っても、体脂肪率は変わりません。むしろ水分不足により体脂肪率が上がることもあります。
● 「水をたくさん飲めば数値が下がる」
→ 一時的に薄まるだけで、健康状態は改善していません。
● 「健診が終わったら暴飲暴食していい」
→ せっかく整えた生活リズムが崩れます。
7. 健診後に見直したいポイント
健診は“結果を見て終わり”ではありません。 むしろ、ここからがスタートです。
① 血糖値が高めだったら
→ 食事内容や食物繊維の摂取量、運動量を見直す。
② 中性脂肪が高かったら
→ 脂質バランスを整え、夕食量、夜食やジュースを控える。
③ 肝機能が気になるなら
→ アルコールの量を振り返る。脂肪肝を疑う。プロテインやサプリメントの影響は?
④ 体重が増えていたら
→ 無理のない減量(3ヶ月で3%、半年で5%の減量を目安) を検討する。
8. 最後に——健診は“未来の自分を守る日”
健診は、 「悪いところを探される日」 ではありません。
むしろ、 “未来の自分を守るためのヒントをもらう日” です。
管理栄養士として多くの方を見てきましたが、 健診をきっかけに生活を整えた方は、 その後の体調が驚くほど改善します。
健診前の数日間は、 体をいたわり、整える時間。
そして健診後は、 結果を“未来の健康づくり”に活かす時間。
どうか、健診を前向きに活用してください。
参考
厚生労働省.(2023). 健康診断・特定健診に関するガイドライン. https://www.mhlw.go.jp/