スーパーの野菜売り場で、「また値上がりしている…」と感じたことはありませんか?
キャベツや白菜、ブロッコリー、ほうれん草など、健康のために積極的に食べたい野菜ですが、天候不順や物流コストの影響を受けやすく、価格が大きく変動します。
「野菜をたくさん食べたいけれど家計が気になる」
「食物繊維を摂りたいけれど、野菜ばかり買うのは大変」
そんな声を耳にする機会が増えました。
しかし実は、食物繊維は野菜だけから摂るものではありません。むしろ、野菜だけに頼るより、穀類や豆類、きのこ類、海藻類などを上手に組み合わせたほうが、効率よく食物繊維を増やせることもあります。
今回は、食物繊維の働きをおさらいしながら、物価高の今だからこそ知っておきたい「食物繊維を無理なく増やす方法」をご紹介します。
1. 食物繊維は現代人に不足しやすい栄養素
食物繊維は、かつて「消化されない不要なもの」と考えられていました。しかし現在では、健康維持に欠かせない栄養成分として位置づけられています。
『日本人の食事摂取基準(2025年版)』では、食物繊維の目標量として以下が設定されています。
- 18~29歳:男性20g以上、女性18g以上
- 30~64歳:男性22g以上、女性18g以上
- 65歳以上:男性20g以上、女性17g以上
ところが、令和6年国民健康・栄養調査によると、20歳以上の食物繊維摂取量の平均値は男性19.2g、女性17.1gでした。
一見すると目標量に近い数値ですが、年代別にみると特徴があります。実は、60歳以降では比較的食物繊維の摂取量が多い傾向がある一方で、仕事や家事、子育てに忙しい働き盛り世代や更年期世代では、これよりも摂取量が少なくなっています。
外食や中食の利用が増えやすい世代ほど、
- 野菜不足
- 豆類不足
- 海藻不足
- きのこ不足
が起こりやすく、慢性的な食物繊維不足につながっていると考えられています。
2. 食物繊維にはどんな働きがあるの?
① 便通を整える
食物繊維の最もよく知られた働きです。
食物繊維は便のかさを増やし、腸を刺激して排便を促します。
特に女性はホルモン変動や運動不足の影響で便秘になりやすく、更年期になるとさらに便秘を感じる人が増えることが知られています。
② 腸内環境を整える
腸内にはおよそ100兆個もの細菌が生息しています。
食物繊維は善玉菌のエサとなり、短鎖脂肪酸という物質を作り出します。
この短鎖脂肪酸には、
- 腸の炎症を抑える
- 腸のバリア機能を守る
- 免疫機能の維持を助ける
といった働きがあります。
近年は、腸内環境が肥満や糖尿病だけでなく、メンタルヘルスや認知機能とも関わることがわかってきています。
③ 血糖値の急上昇を防ぐ
食物繊維は糖質の吸収速度をゆるやかにします。
すると、
- 食後の強い眠気
- 血糖値の乱高下
- 甘いものへの欲求
が起こりにくくなります。
午後になると疲れやすい、集中力が続かないという方は、昼食の食物繊維不足が関係しているかもしれません。
④ コレステロール対策にも役立つ
水溶性食物繊維には、胆汁酸を体外へ排出する働きがあります。
その結果、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の低下に役立つことが知られています。
生活習慣病予防の観点からも重要な栄養素です。
⑤ 全身の健康を支える
2019年に医学雑誌『Lancet』に発表された大規模レビューでは、食物繊維摂取量が多い人ほど、
- 心血管疾患
- 2型糖尿病
- 肥満
- 一部のがん
のリスクが低いことが報告されています。
つまり食物繊維は、「便秘対策のためだけの栄養素」ではありません。
糖尿病や脂質異常症の人は、学会のガイドラインでは1日25g以上の摂取を推奨しています。
しかし、サプリメントなどで一度に大量に摂取すると、ミネラルなどの吸収阻害を起こすこともあるので注意が必要です。
3. 食物繊維を増やす一番簡単な方法
「野菜をもっと食べましょう」
もちろん間違いではありません。
しかし、毎日サラダを山盛り食べ続けるのは意外と大変です。
私が管理栄養士としておすすめしたいのは、
まず主食を変えること。
実はこれが最も簡単で続けやすい方法です。
4. もち麦を混ぜるだけで大幅アップ
白米100gに含まれる食物繊維は約1.5g程度です。
一方、
- もち麦
- 押し麦
- 雑穀
を加えるだけで食物繊維量は大きく増えます。
特にもち麦に含まれるβ-グルカンは、水溶性食物繊維の代表選手。
白米に大さじ2~3割混ぜるだけで、食物繊維量を無理なく増やせます。
野菜を追加で購入するよりも費用対効果が高く、毎日続けやすい方法です。
5. コスパ最強は大豆類
食物繊維補給という観点で見ると、豆類は非常に優秀です。
特に大豆製品は食事に取り入れやすく、例えば、
- 納豆
- 蒸し大豆
- おから
- 豆腐
など。
納豆1パックには約3g前後の食物繊維が含まれています。
さらに、
- たんぱく質
- 鉄
- カルシウム
- マグネシウム
- イソフラボン
も同時に摂ることができます。
更年期世代の女性には特におすすめしたい食品です。
6. きのこは価格が安定した優等生
野菜価格が高騰しても、比較的価格変動が少ないのがきのこ類です。
- えのき
- しめじ
- エリンギ
- まいたけ
- しいたけ
は食物繊維が豊富で、冷凍保存も可能です。
味噌汁や炒め物、炊き込みご飯に加えるだけで食物繊維量が増えます。
7. 海藻も活用したい
わかめやひじき、もずく、のりは、水溶性食物繊維を多く含みます。
味噌汁にわかめを加えるだけでも十分です。
特別な料理を作らなくても、毎日の習慣として取り入れやすい食品です。
8. 果物も立派な食物繊維源
果物は糖分ばかりが注目されがちですが、
- キウイ
- りんご
- みかん
- バナナ
には食物繊維が豊富に含まれています。
特にキウイは便通改善に関する研究が数多く報告されている食品です。
お菓子を食べる代わりに果物を選ぶだけでも、食物繊維補給につながります。
9. まずは1品足すことから
食物繊維を増やそうと思うと、
「もっと野菜を食べなければ」
と考えがちです。
しかし実際には、
- ご飯にもち麦を混ぜる
- 納豆を1日1パック食べる
- 味噌汁にきのこを入れる
- わかめを足す
こうした小さな工夫の積み重ねが最も効果的です。
完璧を目指す必要はありません。
毎日1~2gだけでも増やしていくことが、将来の腸と健康への大きな投資になります。
10. まとめ
野菜価格が高騰する今、「食物繊維不足が心配」という方も多いでしょう。
しかし、食物繊維は野菜だけから摂るものではありません。
もち麦、納豆、豆類、きのこ、海藻、果物などを上手に利用することで、家計への負担を抑えながら十分に増やすことができます。
今日の食卓に、まずは納豆1パック、きのこひとつかみ、もち麦大さじ2割を加えることから始めてみませんか。
小さな習慣が、未来の健康を大きく変えてくれるかもしれません。
参考文献
- 厚生労働省(2025)『日本人の食事摂取基準(2025年版)』
- 厚生労働省(2025)『令和6年国民健康・栄養調査結果』
- 日本食物繊維学会編(2022)『食物繊維 基礎と応用』第一出版
- 日本消化器病学会関連研究会(2023)『慢性便秘症診療ガイドライン2023』南江堂
- 国立健康・栄養研究所『健康食品の安全性・有効性情報』
- Reynolds A, Mann J, Cummings J, Winter N, Mete E, Te Morenga L.(2019)Dietary fibre and human health outcomes: an umbrella review of systematic reviews and meta-analyses. The Lancet, 393, 434-445.