慢性特発性蕁麻疹Vol.2 ~医師との対話・治療編~
前回の記事「夜になると出るそのかゆみ、40代女性に多い『慢性特発性蕁麻疹』かもしれません」では、「慢性特発性蕁麻疹(CSU)」の正体について、湿疹(雑草)と蕁麻疹(モグラ)の違いを例にお話ししました 。
原因が特定できず、いつ出るかわからない「モグラ」のようなこの病気 。「夜中はあんなにかゆかったのに、病院に行ったときには症状が消えていて、つらさを分かってもらえなかった」という悔しい経験を持つ方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな「見えない病気」を「見える化」して、医師に伝えるための実践的なテクニックと、劇的に進化している最新の治療法について解説します 。
病院に行く前に!「見えない病気」を「見える化」しよう
大阪医科薬科大学皮膚科学教室准教授の福永淳先生は「病院に行っても症状が出ていないから、うまく伝えられないという事態を防ぐために、受診の際にぜひ実践してほしいテクニックがある」として、次の2つのポイントを教えてくれました。

① スマホで写真を撮る
これが最も強力な証拠になります。夜中や入浴後など、蕁麻疹が出た瞬間にスマホで患部を撮影すると、膨らみの形、色、出ている範囲などが医師に一発で伝わります。
② メモを取る(UCTスコアの活用)
かゆみや症状が出たとき、次のことをメモしておきましょう。
- いつ出たか(時間帯)
- どんなときに出たか(入浴後、ストレスを感じた時など)
- どれくらいかゆいか、生活にどう影響しているか
また、「UCT(蕁麻疹コントロールテスト)」という4つの質問に答えるだけの簡単なチェックシートで、重症度を測ることもできます。
・症状の程度
・生活への影響
・治療の効果
・全体的な状態
これらを点数化することで、医師に客観的に「つらさ」を伝えることができます。
福永先生は、「遠慮する必要はありません。『こんなに困ってるんです!なんとかしてください!』とアピールすることが、適切な治療への第一歩です」と、患者の熱量こそが医師を動かすとも話しています。

医療現場も変わりつつある〜2026年の新ガイドライン
実は、蕁麻疹の診療は、医師によってバラつきがあるのが課題でした。皮膚科の専門医であっても、蕁麻疹の最新の治療への知識に差があったといいます。内科や救急などの医師においては、皮膚の状態を見て、「アレルギー」だと思い込み、とりあえず血液検査をして「原因不明」と終わらせてしまうケースも少なくありませんでした。
そんな医療現場も変わり始めています。
2026年4月には、蕁麻疹の新しい診療ガイドライン2026が発刊される予定です。このガイドラインでは、皮膚科以外の医師でも「慢性特発性蕁麻疹」を正しく理解し、標準的な治療ステップを踏めるように、分かりやすい指標が盛り込まれます。
・食物アレルギーなどを疑う場合以外は、闇雲なアレルギー検査はしない
→原因探しのための検査よりも、まずは症状を抑える治療を優先する
・重症度や病気のコントロール度の評価
→見た目だけでなく、患者さんの「困り度(UCTスコアなど)」を重視する
このような項目も加わり、どの病院に行っても適切な診断と治療が受けやすくなる環境が整いそうです。
治療の劇的進歩!「画期的な新薬」の登場
日本での慢性特発性蕁麻疹の治療は、大きく3ステップに分かれます。医師が蕁麻疹のタイプを確認し、患者とコミュニケーションをとりながら治療の内容と目標を明確にした上で、スタートします。
■ステップ1=抗ヒスタミン薬の服用(ステロイド薬を含む塗り薬による治療は推奨されていない)
■ステップ2=状態に応じて、補助的治療薬のH2拮抗薬、抗ロイコトリエン薬(保険適用外)を追加
■ステップ3=分子標的薬、免疫抑制薬、経口ステロイド薬を追加または変更
蕁麻疹の画期的な治療薬として、「分子標的薬」が出てきました。これは、蕁麻疹の原因となる物質や、そのスイッチとなる部分をピンポイントで狙い撃ちにする薬です。特に注目されている薬は以下の2つです。
1. オマリズマブ(注射薬)
疾患の原因物質であるIgE抗体に磁石のようにくっつけて無力化する薬。
2. デュピルマブ(注射薬)
もともとはアトピー性皮膚炎の特効薬として知られていましたが、慢性特発性蕁麻疹にも効果があることがわかり、最近使えるようになりました。体質そのものを改善するような働き(疾患修飾)がある可能性があるため、アレルギー体質全般(喘息や花粉症など)を持っている人にも、その他のメリットが期待できます。
これら分子標的薬はメリットが大きい反面、保険適用であっても非常に高価だというデメリットがあります。慢性特発性蕁麻疹を治すには、ある程度の継続使用が必要なため、経済的負担が大きくなります。
しかし、これによって「世界が変わった」「あのかゆみが嘘のようになくなった」という患者さんがたくさん出てきています。夜、かゆくて眠れない…という生活を一変できる可能性があるため、医師と相談し、治療の選択肢の1つとして頭に入れておくといいでしょう。
あなたに合った「オーダーメイド治療」へ
このように、最近では個人の体質に合わせたオーダーメイドに近い治療が可能になってききました。そのためには医師とのコミュニケーションが重要で、いつ、どのような症状なのかを医師に示せる“客観的証拠”を集めておくことが必要です。
「我慢」はしなくていい、つらいなら「つらい」と伝えよう
慢性特発性蕁麻疹は、確かに原因不明で、完治までに時間がかかる病気かもしれません。しかし、「コントロールできない病気」ではなくなりました。最新の治療法を使えば、症状が全く出ない状態(完全寛解)を目指すことができます。
もし、あなたが繰り返すかゆみに悩んでいるなら、まずはスマホで写真を撮って皮膚科の専門医へ行ってみてください。
「長引いていて、生活に困っています。専門的な治療を検討したいです」
その一言が、あなたの毎日を変えるきっかけになるはずです。
※慢性特発性じんましん(CSU)の治療ガイド特設サイト
https://www.allergy-i.jp/kayumi/urticaria/csu/guide/
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